丸亀製麺がはなまるうどんに大きく差をつけた「逆張り戦略」とは

中井 彰人 (株式会社nakaja labnakaja lab代表取締役/流通アナリスト)
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「勝ち組」は地方の“道端”から生まれる

 現に、現在の小売業界における各業態のトップクラスのほとんどが、地方のロードサイドから発祥している。“道端”でも集客できるビジネスモデルを完成させたものが、地方郊外を席巻してから都市部を攻略し、やがて覇者となるのである。

 大手小売業で該当するのは、たとえば総合流通を展開するイオン(千葉県)、アパレルを手掛けるファーストリテイリング(山口県)、家電量販店のヤマダホールディングス(群馬県)、家具・インテリア雑貨店のニトリ(北海道)、ドラッグストアのコスモス薬品(宮崎県)、ホームセンターのカインズ(群馬県)、均一価格ショップの大創産業(広島県)など枚挙にいとまがない。

 外食チェーンにおいても、ロイヤルホールディングス(福岡県)は九州から、すかいらーくホールディングス(東京都)は都下からながらロードサイドで大きくなった。ゼンショーホールディングス(同)のすき家も郊外型展開で吉野家(同)を抜き去った。そもそもスーパーマーケット、ドラッグストア、ホームセンターなどの汎用品小売業は、地方予選を勝ち抜いた“地区代表戦”のような状況で、大半がロードサイドからの勝ち組で構成されている。地方の衰退、大都市への人口・機能の集中が問題視される昨今ではあるが、小売業、チェーンストアは地方でインキュベート(育成)されるものなのである。

 では、地方での人口減少が加速し、ますます衰退が懸念される状況にあって、これから新しいチェーンストアは地方で育たなくなるのだろうか。それは否である。少子化が進むベビー用品の世界でも、ロードサイドの西松屋チェーン(兵庫県)が成長を続けているのに対して、都市型の赤ちゃん本舗(大阪府)は停滞している。カフェの世界でも、ドトールコーヒー(東京)、サンマルクホールディングス(岡山県)、タリーズコーヒージャパン(東京都)といった都市型チェーンカフェを、郊外型のコメダ(愛知県)が抜きつつある。

 地方経済は縮小し、緩やかに衰退してはいるもののいきなり破綻したりはしない。それこそ右肩上がりを想定したチェーンストア理論が行き詰まりを見せるなか、右肩下がりを前提とした地方発チェーンが新しい解を見いだしているかもしれない。これができれば、世界に先駆けた新しいチェーンストアになる可能性すらある。今はまだ埋没して気づいていないだけできっと将来の成長チェーンが、地方でそのビジネスモデルを磨いているのだろう。

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記事執筆者

中井 彰人 / 株式会社nakaja lab nakaja lab代表取締役/流通アナリスト
みずほ銀行産業調査部シニアアナリスト(12年間)を経て、2016年より流通アナリストとして独立。 2018年3月、株式会社nakaja labを設立、代表取締役に就任、コンサル、執筆、講演等で活動中。 2020年9月Yahoo!ニュース公式コメンテーター就任(2022年よりオーサー兼任)。 2021年8月、技術評論社より著書「図解即戦力 小売業界」発刊。現在、DCSオンライン他、月刊連載4本、及び、マスコミへの知見提供を実施中。起業支援、地方創生支援もライフワークとしている。

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