ワタミの宅食が新商品を発売 高齢者に寄り添う「一食450円」の挑戦

取材・文:阿波 岳 (ダイヤモンド・チェーンストア 編集記者)

大手外食チェーンのワタミ(東京都/渡邉美樹会長兼社長)は9月、高齢者向け宅食の新商品「好い日の御膳」を発売した。おかずのみ450円(以下税込)、ご飯付き500円という業界最安水準の価格を実現しながら、管理栄養士監修による健康的な献立と品質を両立。仕入れ・生産・物流の徹底改革で大幅なコスト削減を達成し、ワタミは263月までは一切値上げを行わないと宣言した。渡邉会長は「このお弁当については社運をかけた」というほどに、低価格とおいしさに自信を見せる。

徹底したコスト管理で業界最安値を実現

 ワタミは国内外食、宅食、海外事業の3つを主力事業としている。中でも宅食事業は、253月期において売上高402億円(対前年同期比0.4%増)、営業利益47億円(同16.3%増)を記録し、売上・利益の両面で同社を牽引している。

 今回発売した「好い日の御膳」の開発は、ワタミが有料老人ホーム事業に参入した際、高齢者の栄養バランスが取れていない食事を目の当たりにしたことをきっかけに開発が始まった。

 献立は管理栄養士が設計し、日替わりで提供される。おかずのみは12品目以上で塩分2.0g以下、ご飯付きは13品目以上で塩分2.5g以下に抑えている。ご飯付きは主なターゲットである75歳以上向けに、可食量を10%減らすことで健康面に配慮した。

 主なターゲットは75歳以上としている。全国老人福祉施設協議会によると、特別養護老人ホームにおける令和66月の利用者1人の一日あたりの食費は1753.8 円。ワタミは一人暮らし高齢者の場合「1450円が限界」と考え、今回の価格設定とした。

高齢者向け宅食の新商品「好い日の御膳」

 450円という価格の実現を支えるのは、バリューチェーン全体の徹底的な見直しだ。仕入れでは取引先の開拓を進め、素材・原料を直接仕入れることで原価を削減した。

 生産面では数億円をかけて生産ラインを刷新し、従来「5日で5食」だった製造サイクルを「2日で6食」へと、生産性を3倍に向上させた。

 さらに物流面では商品の消費期限を3日間に延ばし、週2回・6食のまとめ配送を可能にした。また、容器の厚みを薄くすることで配送効率を30%向上。渡邉会長は「手づくりでおいしいものにこだわり、その実現のためにあらゆるコストを見直した。その結果、450円という価格を実現することができた。完成までには2年を要した」と述べた。

 

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取材・文

阿波 岳 / ダイヤモンド・チェーンストア 編集記者

大学卒業後、社会の荒波にもまれる日々を経験。そこで書籍や会報誌の編集に携わるうちに、メディア事業への興味が芽生え、今に至る。
趣味は喫茶店巡りと散歩。喫茶店での一杯のコーヒーや、街角の散策を生きがいとしている。
これまで全都道府県を制覇するという小さな目標を達成した。何かを極めたり、制覇したりすることには、なぜか人一倍の熱意を注いでいる。
最近の悩みは、ここ数年で増えた体重との戦い。健康の大切さを意識しつつも、喫茶店のコーヒーに合わせたスイーツや、ランチの大盛りがやめられない。今日もまた元気に「大盛で!」と注文しつつ、明日こそ控えめにしようと心に誓っている。

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