広島市を本拠とするイズミは、特定地域で店舗展開するリージョナルチェーンの雄。中国・四国、九州で総合スーパー(GMS)64店舗、食品スーパー(SM)120店舗を展開する(2022年2月末)。年商は7000億円規模で、イオンリテール(千葉県)、イトーヨーカ堂(東京都)に次いでGMS3番手につける。
安定成長に揺らぎ?
イズミは1961年、広島県初の本格的なスーパー「スーパーいづみ」を広島市で開業した。73年には広島県初の郊外大型ショッピングセンター「祇園店」を出店するなど店舗網を拡大していった。90年には、イズミの中核事業に成長する「ゆめタウン」の1号店を東広島市に開業した。拡大路線に向かうなか、1995年には九州にも進出した。九州での売上は全体の38%に達しており、42%を占める中国と肩を並べる規模になっている。
90年代末、2000年代末に減益に陥ることもあったが、経営立て直しに成功し、安定した業績を続けてきた。
ただ、ここ数年の業績を見ると、安定さが揺らいでいる。営業収益は19年度(20年2月期)に過去最高の7443億円に達したが、20年度、21年度と新型コロナウイルス禍で2年連続の減収となった。営業利益は17年度に過去最高の384億円を叩き出したが、18年度、19年度と2年連続減益を余儀なくされた。
直近の21年度業績も営業収益6768億円(前年度比0.4%減)、営業利益347億円(3.0%減)。期初計画では営業収益7214億円(6.1%増)、営業利益367億円(2.6%増)の増収増益を見込んでいたが未達に終わっている。
なお、22年度上期業績は、収益認識に関する会計基準を適用しなかった場合の営業収益は対前期比2.4%増となるも、営業利益は同1.7%減であった。主力の小売事業で既存店売上高対前期比が2.8%増(収益認識基準会計適用前の数字で比較)と販売が改善した一方で、売上原価の高騰、経費節減をしたものの水道光熱費の上昇により、わずかながら利益水準は前年同期を下回った。
再成長に向けた5カ年計画を推進中
イズミが現在、推進しているのが、25年度までの5カ年を対象とする中期経営計画だ。中計では事業戦略の柱として「SMの改革」「GMSの再生・進化」を挙げている。
注目されるのはSM事業を成長ドライバーと位置づけていることだ。イズミの成長を牽引してきたのはGMS事業だが、SM事業を拡大し、GMS事業に依存した事業リスクを分散するというのだ。
中計の投資計画にはこの方向性が如実に表れている。5年間の総投資額1500億円うち490億円をSM事業に充てる。390億円を投じ31店舗を出店し店舗網を拡充するほか、100億円をかけて81店舗の既存店活性化を計画している。
出店では、デジタルとリアルを融合した利便性・生産性の高い次世代SMの開発にも取り組むという。また、これまで積極的に手がけてきたM&A(合併・買収)による店舗網の拡大も図る。
商品力を強化するカテゴリーの一つが総菜だ。企画・製造・販売の全工程を自前で行う自社製造ブランド「zehi(ぜひ)」を立ち上げ、22年4月にグループ全店舗で総菜・生鮮加工品20アイテムの販売を開始している。
出店拡大や商品力強化だけでなく、店舗の生産性向上にも取り組む。GMSの縮小版と言えるアプローチをしていたため店舗運営が非効率だったという。そこで、店舗規模別に大型、標準、小型の3つのモデルを設定。これを標準化し水平展開することで、店舗運営の効率向上を図る考えだ。
GMS事業は「再生と進化」へ
一方、GMS事業は「再生と進化」をテーマに掲げているように、新規出店は2店舗にとどめ、既存店の改装や建て替えに重点を置く。投資総額は570億円で、出店に400億円、活性化に170億円(60店舗)を充てる。
既存店の改装や建て替えでは、すでにFC(フランチャイズチェーン)店舗として展開している、ハンズ(旧東急ハンズ)の「Plugs Market」やパルの「3コインズ」などの雑貨店の導入店舗を拡大するほか、有力テナントとの協業による新規FCも導入。FC売場を含めた直営売場とテナントで売場を再構築する。さらに、図書館・公共施設の設置、サービス区画の拡大、百貨店ニーズの取り込みなども含めて、地域の拠点機能を強化するという。
課題の衣料品、住居関連品では組織を改変した。衣料品部と住居関連品部を2021年度にライフスタイル本部として統合しており、衣料品の売場面積を適正化する一方で、総合的な商品力を高め、生活提案や美と健康カテゴリーを強化するほか、「トレンド」「ショップ化」を切り口に新しいマーチャンダイジングを導入する方向だ。
中計の数値目標は、最終年度にあたる25年度に営業収益8300億円、営業利益450億円、売上高営業利益率5.7%を達成することだ。どこまで達成できるかは、こうしたSM事業の拡大とGMS事業の立て直しをどこまで実現できるがポイントとなる。
中計では2030年長期ビジョンを掲げ、30年度目標として中四国・九州を軸に300店舗体制、営業収益1兆円、売上高営業利益率6%の達成をめざすとしている。イズミにとって1兆円は悲願。再三、営業収益1兆円という目標を公表してきた。2011年、創業50周年を機に打ち出したし、17年に発表した前中計で22年度の1兆円達成を目標に掲げている。
22年度は営業収益4543億円(収益認識に関する会計基準適用)、旧基準適用で6971億円(対前期比3%増)、営業利益326億円(同6.1%減)を見込む。中計初年度にあたる21年度は計画未達に終わり、2年目となる22年度も減益の見通しだ。前中計では売上成長の鈍化から2年目に数値目標を下方修正した。今回の中計で目標達成に向けた道のりが険しくなるなか、どのように挽回していくのか。イズミの地力が試されている。