小売DXの伝道師、LINE比企氏が語る デジタル投資で今、知っておくべき視点【後編】

2022/08/19 05:55
    Pocket

    2回にわたってお届けしているLINE 株式会社(東京都)Technical Evangelismチームマネージャーの比企宏之氏へのインタビュー。前編ではLINEが小売業向けに提供している「LINE API」を活用した最新のソリューションについて聞いた。後編では、小売業のDXを最前線で推進する比企氏に、各社がDXを進めるうえで重要となる視点について聞いた。聞き手=大宮弓絵(本誌)、構成=兵藤雄之

    LINE導入で
    会員数が2倍以上に

    ――数年ほど前から小売業界で自社アプリの開発に取り組む企業が増えてきました。しかし、アプリのダウンロード数が悩んでいるという声をよく聞きます。
    比企 まず1つの問題点として、多くの生活者が、「スマホの中に普段使わない不要なアプリを入れたくない」と考えていることが挙げられます。また、ロイヤルカスタマーだからといって、専用のアプリを利用したいかといえば、必ずしも全員がそうではないはずです。

     たとえば、東急ストア(東京都)では、東急ストアの専用アプリの会員数が7年で9万人にとどまっていたのに対し、LINE公式アカウント導入後1年で友だち数が20万人を超えました。さらに、東急(東京都)が2022年5月から開始したLINEマイカード「TOKYU POINT CARD on LINE」との連携によって、東急ストアのLINE公式アカウントの日別「友だち」獲得件数は「TOKYU POINT CARD on LINE」開始前の3倍となり、7月末時点で34万人となっています。 

    TOKYU POINT CARD on LINE

    ――自社アプリと、LINE経由でポイントを貯めるのでは、どこに違いがあるのでしょうか。
    比企 自社アプリは別途、インストールの手間が必要になる点です。一方の「LINE」は日本国内ですでに月間9200万人(2022年3月時点)が利用しているコミュニケーションツールです。LINEのインターフェースに慣れている人も多く、ユーザーはLINE公式アカウントを「友だち」追加すればいいだけなので、利用するまでのハードルが格段に低くなります。
     もう1つ大きなポイントとして「プッシュ通知」の存在があります。多くのアプリで使われている機能ですが、最近は「アプリ通知があってもほとんど見ない」という人が増えていると思います。一方でLINEの場合はその開封率が非常に高いのです。これを活用することで、特典情報やクーポンが顧客にリーチできる可能性も広がります。

    1 2

    記事執筆者

    ダイヤモンド・チェーンストア編集部 / 株式会社ダイヤモンド・リテイルメディア

    ダイヤモンド・チェーンストア編集部は、業界をリードする提案型編集方針を掲げ、小売業の未来を読者と共に創造します。私たちは単なるニュース伝達に留まらず、革新的なビジネスモデルやトレンドを積極的に取り上げ、業界全体に先駆けて解説することを使命としています。毎号、経営のトップランナーへの深掘りインタビューを通じて、その思考や戦略を読者に紹介します。新しくオープンする店舗やリニューアルされた店舗の最新情報を、速報性と詳細な分析で提供し、読者が他では得られない洞察を手に入れられるよう努めています。私たちの鋭い市場分析と、現場の細部にわたる観察を通じて、注目すべき店舗運営の秘訣を明らかにします。

    ダイヤモンド・チェーンストア編集部紹介サイトへ

    © 2024 by Diamond Retail Media

    興味のあるジャンルや業態を選択いただければ
    DCSオンライントップページにおすすめの記事が表示されます。

    ジャンル
    業態