ドラッグストア協会・池野隆光会長が語る「これからのドラッグストア」
日本チェーンドラッグストア協会(東京都:以下、JACDS)は6月14日、第3回通常総会を開催し、2022年度の事業計画と組織人事を満場一致で承認した。JACDS代表理事であり会長の池野隆光氏は留任し、2期目を迎えた。同日、JACDSは特別記者会見を開催した。以下、池野会長の発言を抄録する。
へき地に商品が届かなくなることを懸念
──JACDSの池野隆光会長は2期目を迎えた。
「昨年の7月14日に東京オリンピック・パラリンピックの聖火ランナーを務めたが、それから約1年、あまりにも社会、世の中が激しく動いている。昨年はコロナ禍の中での開催だった東京オリンピック・パラリンピックが無事終わり、今はロシアのウクライナへの侵攻で大変な状況になっている。流通業においては、私たちが取り扱う商品には海外からのものが多いので、仕入れ値に大きな影響を受けている。売価はなかなか上げにくい環境だが、それでいいのだろうかとどうしても考えてしまう。物流が滞って商品が届かなくなってきている問題もある。共同物流、地域物流という考え方をとっていかないと、とくにへき地には商品が届かなくなるのではないかと懸念している」。
「環境問題は待ったなしだ。ペットボトルの回収は比較的受け入れられやすいが、シャンプーや洗剤などのボトルの回収は難しい。DgS業界では実験的にいくつかの店で実証実験をしているが、お客さまはボトルをきれいに洗って持ってきてくれる。洗うのは大変だから、お客さまの意識が変わってきていると感じている」。
「医療行政も右に行ったり左に行ったり大変だが、生活用品の供給基地としてのドラッグストア(DgS)がしっかりとブレないようにしていかなければならない。患者さまや地域住民に迷惑をかけないように、暮らしをしっかりサポートできるように頑張っていきたいと、新しい期を迎えて決意しているところだ」。
コンプライアンスが効いた組織体、業界めざす
──22年度のJACDSの重点施策は、①協会運営基盤の強化と業界環境変化に速やかに対応する組織の構築、②脱炭素化社会の実現に向けた持続的事業活動の推進、③スイッチOTC、スイッチ検査薬、セルフメディケーション税制の拡大活動強化、④街の健康ハブステーション確立へ向けた次世代型店舗の検討、⑤食と健康マーケット拡大への店舗環境整備と相談応需等スタッフ育成支援、⑥夏&ビッグサイト&ハイブリッドJAPANドラッグショーの定番化、⑦DgSとしての薬剤師資質向上に向けた企画立案、⑧調剤推進によるDgSの機能向上、⑨医薬品登録販売者による相談応需と受診勧奨機能の拡充、⑩自治体、他団体との連携強化と防犯・防災等での協力拡大、⑪生産性向上、返品率削減、物流効率化など流通課題解決への取り組み継続、⑫そらぷちキッズキャンプ支援等の社会貢献活動推進──の12項目だ。
「『2期目だからこれがやりたい』というのはない。あれもこれも手を付けて、ダメになってしまうことがないように、次の人たちにつないでいけるようなかたちにはしていきたい。DgSの基本的な機能、つまり街の健康ハブステーションであり、生活用品供給基地であるということを明確にして、しっかり生活者に伝えていきたいと考えている」。
「DgSへの調剤併設が進んでいる。ということはそれにまつわるさまざまな規制、行政の動きに敏感でなくてはならない。そういうことに対して今まではあまり意識をしてこなかったが、今後は『DgSの調剤はダメだ』ということがないように、コンプライアンスが効いた組織体、業界にしていきたいと考えている」。
──コロナ禍の中でDgSは最寄りの食品購入チャネルとして存在感が高まった。
「DgSはもともと非食品からスタートしていて、今では生鮮食品までも扱っているところもある。お客さまにとっては便利なのでよいことだと思うが、商品は扱えば扱うほどモノが足りないという不満が出てくる。たとえば刺身だけあっても醤油がなかったり、牛肉はあってもタレがなかったり、刺身や牛肉があるがために『あれがない、これがない、これしかないのか』となってしまう。DgSはまさにそういう問題に直面していると考えている」