ユニクロ「秋の値上げ」が、「サステナビリティ追求」に舵を切る序章である理由
ファーストリテイリング が一部「ユニクロ」商品を値上げすることが報道されています。これを単なる急激なインフレと円安対策による値上げとみて良いのでしょうか?筆者はそれだけには留まらないとみます。そこにはサステナビリティを追求する新たな「ユニクロ」の立ち位置と、GU(ジーユー)との鮮明な差別化を背景とする、ビジネスモデルの激変を想像することができます。どういうことか、説明していきたいと思います。
ユニクロにも値上げ観測
本稿を執筆しているのは6月下旬。筆者は関東在住ですが、あっという間に梅雨が明けました。猛暑到来で、スイカとゴーヤが待ち遠しい気分です。
これだけ急に熱暑が来ると流石に体にこたえます。雨不足も心配ですし、北極や南極の動物達の生存環境も心配です。近くのコンビニの店頭では、大雨などの自然災害対策というポップのもとにカンパンなどの非常食が陳列されていました。抜け目ないな、という印象です。
猛暑と並んで今熱いと言えば、それは「物価」でしょう。最近気になったニュースに、ユニクロが一部秋冬ものの値上げを予定しているという報道がありました。
「いよいよ衣服も原料高と円安で値上げが避けられない、ユニクロならば消費者に受け入れられそうだ」というのが素直な第一印象です。しかし、果たしてグローバルカジュアルウエアでトップクラスのファーストリテイリングが、単純に”値上げしました”と宣言して終わりになるでしょうか。
ひょっとすると、この値上げが同社の本源的な戦略転換のはじまりになるのではないか– 筆者はそのような予想と期待をしています。それは、ユニクロ事業の在り方、GU事業と合わせた事業ポートフォリオ全体の在り方、欧米戦略など広範な影響をもつものになるでしょう。
今回はこのお話をさせていただきます。
値上げは「時間の問題」
まずマクロ指標で衣料品の輸入価格と卸売価格のトレンドを外観しておきましょう。
まず、輸入物価。日銀が本年6月10日に公表した輸入物価指数繊維品は円ベースで4月が前年同月比+11.4%増、5月は+12.7%増と値上がりしています。
これに対して、総務省が6月24日に発表した消費者物価指数被服及び履物は4月が同+0.8%増、5月は+0.9%増にとどまっています。
このギャップを素直に解釈すると、「仕入れ価格にはインフレが顕在化しているが、小売段階では以前からの在庫の存在によってまだインフレは顕在化していない。しかし在庫が入れ替わるうちに仕入れ価格の高騰を価格に転嫁する動きが顕在化しそうだ」となるでしょう。
原料価格や人件費、輸送費、為替相場が現状のトレンドを続けるとすれば、ユニクロが、在庫が回転し重衣料が増える秋冬ものから値上げを始めるという見立ては至極順当だと考えます。
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