第38回 アフターコロナで変わる!ショッピングセンターのテナントミックス前編
SCのテナント特性の変化とSC運営のギャップ
では、SCにおけるテナント構成は今、どうなっているのか。これはテナントの取り扱い品目の推移に現われている。元々、6割がアパレルと言われる百貨店に比べるとSCの取り扱い品目は安価で生活実需の高いものが多かったが2020年の開業SCではアパレル比率は17%となり、その率は年々斬減傾向を示している。
本連載20号でも指摘した戦後の「衣食住」は今では「食住衣」に変化しているのである。
ところが今もSCの現場では接客ロープレやVMD研修など、物販それもアパレルに寄った運営が続いている。
最近では、SCが作ったECサイトにテナントの店頭在庫を連動する仕組みも作り始めているが、これはECの売上を何とか店舗の売上に計上することを狙っている。だが、そもそも物販店舗が減少し、在庫連動を行う対象店舗の比率は相当少ない。ましてやSCの店舗は定期借家契約を前提に数年で入れ替わる。その都度、新規店舗と在庫連動の作業を行うには相当のコストと協議と調整と作業の手間が掛かる。今後、在庫を持たず売上の無い店舗(ショールーミング)が増加し、テナントが独自にECサイトを持つ今の時代、SCがそこに拘る意味はどこにあるのだろうか。
では、今後、SCに出店するテナント、誘致すべきテナントとはどのような特徴を持つことになるのだろうか。次回は、ここを明らかにしていきたい。
西山貴仁
株式会社SC&パートナーズ 代表取締役
東京急行電鉄(株)に入社後、土地区画整理事業や街づくり、商業施設の開発、運営、リニューアルを手掛ける。2012年(株)東急モールズデベロップメント常務執行役員。2015年11月独立。現在は、SC企業人材研修、企業インナーブランディング、経営計画策定、百貨店SC化プロジェクト、テナントの出店戦略策定など幅広く活動している。岡山理科大学非常勤講師、小田原市商業戦略推進アドバイザー、SC経営士、宅地建物取引士、(一社)日本SC協会会員、青山学院大学経済学部卒
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