【提言・解説】最強 シニアマーケティング

2013/08/15 08:10
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「10年後に食べていくための」
市場創造戦略を著者が解説

 

今年、65歳以上が4人に1人となり、本格的な高齢化時代を迎えた。人口減少が進み全体の消費市場は縮小するなかで、シニアマーケットは、今後拡大し成長が見込める。流通各社が狙うこの市場をどう取り込むべきか? 『10年後に食べていくための最強シニアマーケティング』の著者・西川立一氏が提言・解説する。

 

業態超えたシニア争奪バトル

 

 すでに50歳以上の利用が30%を超え、かつての主要顧客だった20代を上回ったコンビニエンスストアは、シニアを強く意識し、商品開発や売場づくりを強化している。ドラッグストアも、自分自身で健康を管理する「セルフメディケーション」の推進に取り組み、掛かりつけ薬局の役割を担うべく、品揃えやサービスを強化。食品を拡充することで利便性も高める動きも目立ち、訪問看護など地域の医療サービスも展開するなど、高齢化社会の地域における生活インフラの役目を担おうとしている。

 

 こうした動きに危機感を抱いているのが食品スーパー。「健康」、「少量」、「こだわり」などをキーワードに品揃えをシニア対応、高齢者に利用しやすい買物環境を整えて顧客の引きとめに懸命だ。GMS(総合スーパー)でもシニアシフトが進み、シニア層をがっちり囲い込んでいた百貨店も新たな取り組みで体制を立て直す。そして、「ブックオフ」や「ヴィレッジヴァンガード」「TSUTAYA(ツタヤ)」といった若者向け業態も、シニア客の取り込みやシニア向け業態の開発を進めている。

 

 まさに、業種・業態の垣根を越えてシニア争奪バトルが展開されているわけだが、大手チェーンではイオン(千葉県/岡田元也社長)の取り組みが顕著だ。アクティブシニアを、人生の中で最上の世代とし「グランド・ジェネレーション」と名付け、食、ファッション、リフォーム、トラベル、金融、医療、カルチャースクール、葬儀などあらゆる分野にわたって、シニアシフトを強めている。

 

 

「シニア」とひとくくりりにするのはNG

 

 翻ってホームセンター(HC)のシニアマーケットの攻略はどうだろうか。衣食住の中で取り組みがいちばん遅れているのが住関連である。高齢になれば、住まい方も変われば、暮らし方も変わる。介護を必要とする高齢者に対しては一応の商品やサービスが提供されているが、そうでないシニアが健康を維持し快適な暮らしをしていくためには、まだまだ十分な対応がなされていない。

 

 視力や握力など身体機能が衰えた高齢者に使いやすい機能性や快適な居住性、生活を楽しくする要素などさまざまな取り組みがある。HCのシニア需要対応は、リフォームにとどまっているのが現状で、可能性の大きいDIYに至ってはまったく手付かずと言ってもいいのが実態である。

 

 たとえば、DIYとホビーと融合させることで、カネも時間もある中高年を取り込むことができ、課題となっている女性客も引き付けることができる。そのためにはシニアを意識した売場づくりやサービスの展開も必要となる。

 

 シニアという新たに隆起する新大陸をどう攻めるか、そこにはいくつか気をつけねばならないポイントがある。まず、シニアをひとくくりとしてとらえるのではないということ。団塊の世代もそのかたまりがばらけ、所得格差が生じ、仕事の有無でも生活スタイルが異なり、趣味や嗜好(しこう)も多種多様となっている。そしてアンチエイジング志向で、実年齢より10歳は若いと思っており、「シルバー」、「高齢者」といったイメージを嫌う。したがってシニアに絞り込むのではなく、ターゲットをぼかして結果的に取り込む戦略が有効だ。そして孫、子どもも視野に入れた3世代対応も必要となる。

 

 ファミリーや若者の沈下する旧大陸にしがみつけばじり貧となる。シニアマーケットという隆起する新大陸を攻めなければ、視界は開けてこない。このままでいけば2035年には3人に1人が65歳という超高齢化時代となると推測されている。すでにシニアが消費の主役となるなかで、変化対応業として流通業の役割が問われている。

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