第66回【産後ケアハウス】産後ケアと育児支援の重要性に光を当てた専門施設が登場

2013/03/23 10:40
Pocket

 東京・赤坂に、出産後の女性の体と心の回復をサポートする専門施設「とよくら産後ケアハウス 東京赤坂」が登場した。
 

 ひと昔前は、産後、1カ月ほど実家に戻ってゆったり過ごすという人が多かった。それによってじっくり体を回復させられるほか、実家の母親から育児について教えてもらうことができた。しかし昨今は、高齢出産によって妊婦の母親も高齢化しており、負担を掛けづらくなっている。そのため実家に戻らずに出産する人が増え、心身の疲労がきちんと回復するのを待たずに家事を再開し、第二子の妊娠がしにくくなってしまうということもあるという。
 

 助産師として36年の実績を持ち、横浜市で「豊倉助産院 横浜緑園」を運営する豊倉節子氏が「産後ケアの重要性をもっと知ってもらい、子育ての悩みや不安を受け止める場所として、機能していきたい」という考えから開業した。
 

 同施設は24時間助産師が常駐し、保健師や栄養士もいる。シャワーとトイレを完備した、1部屋20㎡ほどの個室を5室用意していて、母親と赤ちゃんがくつろいだ時間を過ごすことができるように配慮。滞在中は、基本的に何もせずにのんびりすることが一番の目的だが、アロマオイルを使ったマッサージ(要予約)やハーブミストケア、骨盤ケアなどが受けられるほか、助産師などのアドバイスのもと、沐浴や授乳の練習もできる。
 

 食事は旬の野菜を中心とした和食を提供していて、白米に雑穀を混ぜたり、黒米や赤米を加えて不足しがちな鉄分の補給ができるようにしたり、「うま味調味料などの化学調味料を使わないのはもちろんのこと、母乳が出にくくなるため乳製品類は出さない」と豊倉氏は話しており、「これから子供を育て、家族の食事をつくるにあたって、食生活の大切さを感じてもらえれば」と言葉を続ける。
 

 利用者は30代以上の女性が中心で、出産前に見学に訪れて予約を決める人が目立つ。病院やクリニックを退院した後に滞在する場合、2泊3日の利用者が最も多い。同施設で分娩を希望し、そのまま産後ケアプランを利用するケースも。3週間という長期の利用者もいた。父親も一緒に泊まることができ、同施設から出勤する人もいる。利用料は1泊2日/6万3000円で、「今後、1週間程度の利用が増えてくるのでは」と豊倉氏。
 

 産後すぐではなくても、子育てに悩み、「ちょっと疲れた……」と感じたときに、日帰りや1泊2日などで気軽に心身を休めてもらってもよいという。精神的に追い詰められてしまう前の、より所になれるように、産後ケアプランだけではなく、その後の育児サポートとして、ベビーマッサージ教室や料理教室も開催し、継続的に交流を図れるような仕組みをつくっている。
 

 子育て中の女性がメーンの客層であるドラッグストア(DgS)にとっても、“育児サポート”は欠かせない。このような施設の取り組みはヒントにもなり、連携した取り組みなども含めて、顧客ロイヤルティの向上に役立ちそうだ。

© 2024 by Diamond Retail Media

興味のあるジャンルや業態を選択いただければ
DCSオンライントップページにおすすめの記事が表示されます。

ジャンル
業態