京都ですき焼きをリーズナブルに楽しむ、地元民が教える隠れた名店

2023/05/04 05:55
森本 守人 (サテライトスコープ代表)
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完全セルフでも心配は無用

 7~8分して目の前に届けられたのがこのセット。牛肉の上には牛脂、砂糖。向こう側には長ネギ、玉ねぎ、さらに奥には豆腐、糸こんにゃく、麩などが盛られた皿が見える。今から食べると考えると、気分が盛り上がる。

キムラすき焼店は完全セルフサービス。鍋に具材を入れ、味付けまでをすべて自分でやるシステムとなっている。自由度が高く、私は好きだ

 京都のすき焼き店と言えば、スタッフが鍋に具材を入れ、味付けまでしてくれるところも少なくない。しかし、ここキムラすき焼店はすべて自分でやる必要がある。つまり完全セルフサービスなのだ。低価格を実現できる理由のひとつはここにあるが、自由度が高いため私はこのスタイルが気に入っている。

説明書「すき焼の炊き方レシピ」があるので、この通りにつくればおいしくできあがる

 すき焼きをつくった経験がないという人もいるだろうが、心配は無用である。なぜなら説明書がすき焼きセットとともに運ばれてくるからだ。説明書「すき焼の炊き方レシピ」は、たくさんの写真を使い、料理の手順を丁寧に解説してくれている。読みながら進めればまったく問題はない。

 私も早速始める。

 最初は「①火をつけて(強火)牛脂を全体に広げます」とある。牛肉の上にあった牛脂を、割りばしでつかんで温めた鍋に乗せ、くるくると円を描く。次は「②タマネギ、ネギ、糸こんにゃく、豆腐から炊きはじめます」。ふむふむ、簡単じゃないか。

まず牛脂を鍋に入れ、くるくると円を描く
タマネギ、ネギ、糸こんにゃく、豆腐などを入れる

 途中から解説を読まず、適当に具材を放り込んだ。牛肉を野菜の上に乗せて砂糖、しばらくして“だし”を投入した。

 ここで気づいたが、火の通りがよい麩と三つ葉は、完成が近づいたところで入れるみたい。慌てて、鍋から取り出し退避させる。ほかにも「肉を糸こんにゃくの隣にすると、肉が硬くなります」という重要情報もあるので、やはり説明書はしっかりと読み込んだ方がよいのかも。まぁ、そんなに神経質にならなくてもおいしくできるとは思うが。

 そして完成──。さっそく牛肉からいただいく。溶き卵につけ、口に頬張る。そしてビールをごくりと飲んだ。最高である。その後、野菜→牛肉、そして麩、糸こんにゃく→牛肉、と食材の順番に変化をつけながら楽しんだ。

完成、まずは牛肉から
あらかじめ溶いていた卵につけ頬張る

 夢中で食べた。ご飯も注文していたので満腹である。私は視線を遠くにやったまま放心状態となり、しばらく動けなかった。どれぐらいの時間が経過しただろうか。ようやく正気に戻った私はお勘定を済ませ、店外に出た。

 時計を見るとまだ13時過ぎである。昼からビールを飲んでしまったという背徳感が、密かな喜びを増幅させる。あぁ、これを幸せと言わずして、何を幸せと言おうかと思いながら、私は再び歩き出した。

記事執筆者

森本 守人 / サテライトスコープ代表

 京都市出身。大手食品メーカーの営業マンとして社会人デビューを果たした後、パン職人、ミュージシャン、会社役員などを経てフリーの文筆家となる。「競争力を生む戦略、組織」をテーマに、流通、製造など、おもにビジネス分野を取材。文筆業以外では政府公認カメラマンとしてゴルバチョフ氏を撮影する。サテライトスコープ代表。「当コーナーは、京都の魅力を体験型レポートで発信します」。

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