京都ですき焼きをリーズナブルに楽しむ、地元民が教える隠れた名店
完全セルフでも心配は無用
7~8分して目の前に届けられたのがこのセット。牛肉の上には牛脂、砂糖。向こう側には長ネギ、玉ねぎ、さらに奥には豆腐、糸こんにゃく、麩などが盛られた皿が見える。今から食べると考えると、気分が盛り上がる。

京都のすき焼き店と言えば、スタッフが鍋に具材を入れ、味付けまでしてくれるところも少なくない。しかし、ここキムラすき焼店はすべて自分でやる必要がある。つまり完全セルフサービスなのだ。低価格を実現できる理由のひとつはここにあるが、自由度が高いため私はこのスタイルが気に入っている。

すき焼きをつくった経験がないという人もいるだろうが、心配は無用である。なぜなら説明書がすき焼きセットとともに運ばれてくるからだ。説明書「すき焼の炊き方レシピ」は、たくさんの写真を使い、料理の手順を丁寧に解説してくれている。読みながら進めればまったく問題はない。
私も早速始める。
最初は「①火をつけて(強火)牛脂を全体に広げます」とある。牛肉の上にあった牛脂を、割りばしでつかんで温めた鍋に乗せ、くるくると円を描く。次は「②タマネギ、ネギ、糸こんにゃく、豆腐から炊きはじめます」。ふむふむ、簡単じゃないか。


途中から解説を読まず、適当に具材を放り込んだ。牛肉を野菜の上に乗せて砂糖、しばらくして“だし”を投入した。
ここで気づいたが、火の通りがよい麩と三つ葉は、完成が近づいたところで入れるみたい。慌てて、鍋から取り出し退避させる。ほかにも「肉を糸こんにゃくの隣にすると、肉が硬くなります」という重要情報もあるので、やはり説明書はしっかりと読み込んだ方がよいのかも。まぁ、そんなに神経質にならなくてもおいしくできるとは思うが。
そして完成──。さっそく牛肉からいただいく。溶き卵につけ、口に頬張る。そしてビールをごくりと飲んだ。最高である。その後、野菜→牛肉、そして麩、糸こんにゃく→牛肉、と食材の順番に変化をつけながら楽しんだ。


夢中で食べた。ご飯も注文していたので満腹である。私は視線を遠くにやったまま放心状態となり、しばらく動けなかった。どれぐらいの時間が経過しただろうか。ようやく正気に戻った私はお勘定を済ませ、店外に出た。
時計を見るとまだ13時過ぎである。昼からビールを飲んでしまったという背徳感が、密かな喜びを増幅させる。あぁ、これを幸せと言わずして、何を幸せと言おうかと思いながら、私は再び歩き出した。
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