イズミのネットスーパー、購買頻度が急上昇 大胆リニューアルしたその戦略とは?

中四国・九州で総合スーパー(GMS)と食品スーパー(SM)を展開するリージョナルチェーン、イズミ(広島県/山西泰明社長)のネットスーパーが再始動している。昨年発生したシステム障害の影響で、ネットスーパーもサービス休止に追い込まれた同社。復旧後は従来のモデルを大胆に変更し、定額制に移行している。新ネットスーパーでどこまで巻き返しを図れるか。事業責任者を取材した。
送料モデルからサブスク型に移行
今から1年前の2024年2月、イズミはグループの一部サーバーがランサムウェアに感染し、大規模なシステム障害が発生した。仕入れを担う発注システムに支障がでるなど甚大な被害を受け、自社ネットスーパー「ゆめデリバリー」も休止に追い込まれた。
「2~3週間で復旧できると踏んでいたが、結果的に3カ月もかかってしまった。それだけのブランクを経てネットスーパーを再開するにあたり、何か大きなインパクトがなければ利用者は戻ってこないと考えた」
イズミのマーケティング本部営業企画部部長の横山聡氏は当時を振り返る。そのインパクトというのが、月額会費制、いわゆるサブスクリプションモデルの導入だ。
イズミでは21年に店舗出荷型ネットスーパーの「ゆめデリバリー」を開始し、ネットスーパーに参入した。コロナ禍で大きく伸びた店舗売上がその後なかなか伸びていかない中、ネットスーパーでウォレットシェアを高めていく、というねらいのもとサービス開始に至ったという。
当初は利用1回ごとに配送料がかかる仕組みで、4店舗からスタートし、最大15店舗まで拡大。地盤とする広島市内はほぼカバーし、そのほか県内の一部、熊本県でも熊本市内を中心にサービスエリアを広げた。
そうした中で、先述のシステム障害が発生。3カ月超の休止期間を経て、24年5月30日に定額制モデルに生まれ変わるかたちでリニューアルした。

「定額制モデルのネットスーパー」というと、三重ローカルのスーパーサンシ(田中勇社長)が長年にわたり展開、黒字化していることで知られるが、実はリニューアル後のゆめデリバリーは、スーパーサンシの「サンシモデル」がベースとなっている。「ネットスーパー単独で成功を収めているモデルということで、実はリニューアルの1年ほど前からスーパーサンシさまに多くのことを学ばせていただいた」(横山氏)。
なお、ゆめデリバリーのシステムはイズミの自社開発で、スーパーサンシのネット宅配の統合プラットフォーム「JAPANNetMarket(ジャパンネットマーケット)」には加盟していない。
置き配に対応!B2Bにも意欲
定額制モデルに生まれ変わったゆめデリバリーはどのようなサービスなのか。
月額会費は660円(税込、以下同)。子育て世帯の利用が多く見込まれることから、未就学児のいる世帯を対象にした「子育て応援定額パス」(月会費330円)も用意する。配送は最短当日で、1カ月に何回利用しても配送料はかからない。自宅への配送だけでなく、店内のカウンターや店頭の専用ロッカーでのピックアップのほか、駐車場でクルマに乗ったまま注文商品を受け取ることもできる。
現在は直接受け取りが大半とのことだが、サンシモデルでも導入している鍵付き専用ロッカーによる置き配にも対応する。そのほか、掛け払い(後払い)も可能な法人向けサービスも提供しており、今後デイケアや老人ホーム、幼稚園・保育園などに利用を広げていく予定だ。

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