低成長のサステナブル経済へ移行 商社と合繊メーカーが生き残るたった2つの戦略とは
アパレル業界もサステナブル経済に移行しようとしている。これは、二次流通が発展する一方で、一次流通は縮小する。すなわち低成長時代に入るということだ。このなかでわれわれはビジネスモデルを変革しなければならない。サステナブル経済における川中(商社)と川上(素材メーカー)の戦略を解説したい。
低成長下の企業戦略における最重要命題とは
東京オリンピックの開幕式を生中継で観て、日本人としての誇り、そして、紆余曲折ありながらも、よくここまで形にしたものだと感心した。スタジアムで花火があがり、様々なパフォーマンスと苦難を乗り越え日本にやってきた海外の選手、そして、生きているうちに二度と見ることができない開幕式を前に、あらためてスポーツの素晴らしさを感じた次第である。この「今の」感動を素直に受け入れ、一生懸命戦うアスリートを皆で応援しようではないか。一言冒頭に書かせていただきたい。
さて、私の愛読書である日本を代表する経営コンサルタント、大前研一氏が若かりし頃に書いた「続・企業参謀」(プレジデント社)、第二章「低成長とは何か」という章に、低成長下の企業戦略における最重要命題として、「なぜ事業を行うのか」という本質的問い直しが必要であり、企業目的の再定義が必要であると書かれている。
同書の初版は1975年だから、今から45年も前に書かれたものなので、必ずしも現代の世情と処方箋を表しているとは言いがたいが、同氏の俯瞰力と本質を見抜く力に多大な影響を受け経営コンサルタントの道へ入ったきっかけとなった同書を私は今でも繰り返し読んでいる。私が、拙著「ブランドで競争する技術」(ダイヤモンド社)を書いたインセンティブも同書であり、ダイヤモンド社の担当者と徹底して、この「企業参謀」をベンチマークし2年をかけて書いたものだった。
思えば、私が尊敬する経営者の柳井正氏も、世の中が激しく移り変わる時代のなかで、「服は、我々にとっていかなるものか」という問いかけを自らに課して、「ライフウエア」というコンセプトを生み出したのは、いまさら私が解説するまでもない。このように、昔の名著と呼ばれるものの中には、今こそ我々が理解しなければならない格言や名言が山のようにちりばめられている。意味の見えないJARGON(専門用語)を使っても未来は見えない。むしろ、こうした名著を読み返し本質論から事業戦略を考えてゆくべきだというのが本日言いたいことだ。
さて、前置きが長くなったが、最近私は「二次流通の河合」と言われているようだ。私は、真のサステナブル社会の実現、そして、その中でのアパレルの経済活動は、徹底的に無駄と重複を省いた「デジタルSPA」と、もう消費者が必要とする以上の新しい服を作らない「二次流通市場」による中古品販売による経済活動しかないと論じているからだろう。こうした世界観の中で、かねてから私が批判している「オフプライスストア」などによる、ブランド毀損と価格破壊を食い止めるためには、自らが自社のブランドを大切に育て、人が着たあとまで面倒を見る「Certified by XXX」という形でブランドが消費者から商品を買い取り、補修し再販するという動きをすべきであり、それこそが環境負荷も発生しないゼロエミッションの経済活動であると私は今でも信じている。
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