外食・小売り、値下げの波=反転攻勢、5ドルメニューも―米
【ニューヨーク時事】米国の外食・小売業界で値下げ競争が過熱している。ファストフード大手マクドナルドは5ドル(約800円)のセットメニューを投入。小売り大手ターゲットなども食料品などの価格引き下げを通じ、長引くインフレで節約志向を強める消費者の囲い込みを加速させている。
インフレが続く米国では、度重なる値上げに嫌気が差し、生活防衛に走る消費者が外食など不要不急の出費を抑える傾向が鮮明になっている。米商務省が発表した5月の小売売上高によると、外食は前月比0.4%減だった。
マクドナルドは先月25日、ハンバーガーやポテトなど4品を5ドルで提供するセットを発売した。物価の高いニューヨークでは、一般的な昼食代は10ドルを上回ることから、割安価格と言える。直近の決算が減収減益だったコーヒーチェーン最大手スターバックスなども5ドルのセットを導入。値頃感の演出に腐心している。
小売業でも、業績不振に直面するターゲットが5000品目の価格引き下げを表明したほか、ウォルマートは5月の公表時点で7000品目の値下げを実施した。高所得者の取り込みも進める同社は「家で食事を取る機会が増えるため、今後も値下げは業績に寄与する」(幹部)とみる。
サンフランシスコ連邦準備銀行の調査によると、政府のコロナ支援金などで積み上がった家計の余剰貯蓄は今年3月には枯渇した。余剰貯蓄が個人消費を支えていただけに、小売業には逆風だ。米国野村証券の雨宮愛知シニアエコノミストは、今後は値下げの動きが広がり、「販売量の維持・拡大を目指す方向に転換していく」と予想する。