生鮮総菜、PC超活用に本物のSPA化!「総菜の独自化」最前線
成長基調の中で岐路に立つ総菜
総菜市場は依然として成長基調にある。日本惣菜協会が発表した「2023年版惣菜白書」によると、2022年の国内総菜市場の規模は10兆4652億円で、前年から3.5%増だった。コロナ禍初期には、実店舗での買物頻度を抑える動きが広がり、保存性の低い総菜への需要が低下。20年の市場規模は10兆円を割り込んだものの、21年は再び増加に転じ、22年にはコロナ前の水準に回復したかたちだ。さらに23年も市場は堅調に推移しており、日本惣菜協会の清水誠三理事によれば「通年では10兆円台後半への到達も期待できる」という。
しかし取り巻く環境に目を向けると、決して楽観ムードではいられない。むしろ総菜は今、大きな岐路を迎えつつある。
真っ先に挙げられるのが、コロナと立ち代わるかのごとく顕在化したインフレの影響だ。総菜は数多の素材や調味料を使い、調理には水道光熱費もかさむため、部門運営コストは高騰している。「メーカーとの価格交渉もシビアになってきており、これまでと同じような価格設定を貫くことはほぼ不可能」(某食品スーパー〈SM〉の総菜担当者)として、商品の値上げに踏み切らざるを得ない状況だ。
ただ、物価高騰下で消費者の価格感度も厳しさを増している。原価上昇分を単純に価格に転嫁しては客離れを引き起こすリスクも高い。分量を減らしたり、より安い原材料に切り替えたりして何とか売価を据え置くといった対応も各社でとられているが、インフレが長期化する予測のなかで抜本的な解決策とはいえない。
課題はそのほかにも山積みだ。コロナ前から続いていた慢性的な人手不足は人時のかかる総菜部門では喫緊の問題。さらに、コンビニエンスストアや総菜専門店、コロナ後もテイクアウト需要が続く外食産業、近年価格競争力の高い総菜の販売を拡大するドラッグストアやディスカウントストアなど、総菜を扱う業種業態は多様化しており、中食市場の競争は激化する一方だ。
こうした激戦の中を生き抜くには、価格以上の価値を訴求できる総菜を、安定的かつ効率的に開発・製造できる体制を構築し、他社に対して圧倒的な差別化を実現するほかない。それができるかできないかが近い将来、企業間の優勝劣敗を決定づけてしまうといっても過言ではないのだ。
そうした“岐路”を見据え、総菜改革に本腰を入れる企業の取り組みにフォーカスを当てるというのが、本特集の趣旨である。
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