#5 セブンの変化対応を上回る!セコマはなぜ世の中の変化を先取りできるのか
コンビニ大手の取り組みを10年先取り!
セコマの強さを最も表しているのが、出店市町村の数です。道内179市町村中173市町村に店があり、北海道の総人口の99.8%をカバー。店舗数ではいい勝負をしているセブンも出店市町村数は120にすぎません。セブンが店を出せない過疎地や離島でもセコマのオレンジ色の看板を見つけることができる。北海道において「お客様の生活拠点として『便利の創造』を続ける」コンビニはまぎれもなくセコマなのです。
セコマは、サービス産業生産性協議会主催の2019年度顧客満足度調査(コンビニ部門)でも、セブンを抑えて4年連続のトップに選ばれています。なぜセコマはこれほど支持されているのでしょうか。その理由は、セブンの「変化対応」のさらに上を行く「変化を先取りする力」にあると私は考えています。
道外の人が初めてセコマの店に入って驚くのが、プライベートブランド(PB)商品の豊富さでしょう。同社が「リテールブランド」と呼ぶ自社開発商品は、加工食品、酒・飲料、日配品、総菜、冷食、菓子、日用品にまで及び、すでに1000種類を超えています。さらに驚くのが価格設定で、500mlペットボトルのお茶が1本100円、おにぎりが1個100円、小分けの総菜が1パック100円…。「100円ショップ?」と言いたくなる安さです。
もう一つの特徴が、丼物などを店内調理する「ホットシェフ」のコーナーで、できたてのカツ丼や豚丼が540円(店によって変動あり)とこちらも安い。北海道には商店や飲食店が成り立たないような過疎地が数多くあり、セコマはそうした地域の住民にとってのライフラインの役割を果たしているのです。
セコマがリテールブランド商品を初めて投入したのは95年、ホットシェフの展開を始めたのが94年のことでした。セブン&アイのPB「セブンプレミアム」の登場が07年、ローソンの店内キッチン「まちかど厨房」の登場が11年ですから、大手の取り組みを10年以上先取りしていたことになります。
日本のコンビニは、もともと24時間営業の利便性で成長してきた業態です。90年代は店を出せば売れる時代であり、商品やサービスはいたって普通でした。大手チェーンが独自商品の開発や多様なサービス展開に力を入れ始めるのは、21世紀に入り、店舗数が飽和状態になってからのことです。
そうした中で、セコマは大手チェーンが10~15年後に後追いするサービスに着目していたわけです。さらに興味深いのは、24時間営業は当初から重視しておらず、全店の2割程度に過ぎないということです。現在、他のコンビニが頭を悩ましている24時間営業問題はもともと存在していないことになります。
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セコマがPB開発を進めた、“意外な”事情とは!?
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