開始から1年で劇的変化!「ぐるぐる図」で OMOを強化するベイシアのDX戦略とは
「ぐるぐる図」で
OMOを強化
-ベイシアのDX戦略とはどのようなものですか
亀山 さまざまなデジタル施策をぐるぐるとつなぐ「ぐるぐる図」をベースに、ベイシアのデジタルコンセプトを立案した。
具体的には、モバイルアプリやポイントプログラムで会員を増やし、オウンドメディアでの情報発信を通じて顧客エンゲージメントを高め、OMO(オンラインとオフラインの融合)を強化して売上を拡大させる。それとともに、データ分析によって顧客への理解を深めて顧客一人ひとりに寄り添い、外部のアプリやサービスとも連携して顧客の日常生活全般で楽しみを増やすという一連のデジタル施策に継続的に取り組んでいく戦略だ。
-顧客とデジタルでどのような接点を持ち、どのようにコミュニケーションしていますか
亀山 20年11月に公式モバイルアプリ「ベイシアアプリ」をリリースした後、12月にはポイントプログラム「ベイシアポイント」を開始し、顧客との接点となるプラットフォームを整備した。「ベイシアアプリ」を先行させたことにより、「ベイシアポイント」のデジタル会員比率は約75%と競合他社に比べて圧倒的に高い。
「ベイシアアプリ」では、電子チラシやクーポンが閲覧できるほか、アプリ会員限定価格商品を日替わりで配信、ベイシアの強みである「安さ」で顧客とのコミュニケーションをはかっている。
21年6月にはオウンドメディアを立ち上げた。日々の献立に役立つレシピや健康・美容にまつわる情報、プライベートブランド(PB)商品の開発ストーリーなどを紹介している。
顧客に寄り添う
EDLPへ
-OMOの領域ではどのような取り組みをすすめていますか
亀山 21年8月、楽天(東京都/三木谷浩史社長兼会長)グループのネットスーパー向けプラットフォーム「楽天全国スーパー」に出店することで合意した。21年秋以降、オンラインで注文した商品を店舗で受け取るピックアップサービスなど、ネットスーパーにまつわるサービスも拡充させる。また、節分の恵方巻や土用の丑の日といった季節に基づく受注の受付をハレの日受注と呼んでおりそれらをアプリの機能として追加し、お客様の利便性、従業員の業務低減、そして廃棄ロスを減らす取り組みも進める予定だ。
また、店舗での在庫状況や商品の陳列棚の位置が閲覧できる機能をモバイルアプリに搭載し、店舗での買い物の利便性向上にもつなげる。
-顧客データをどのように活用していますか
亀山 ベイシアでは、英テスコ(Tesco)で実践されている「商品DNA」分析を導入する計画だ。ID-POSデータを活用して購買履歴から顧客の価値観やライフスタイルを読み解き、従来の「マス」ではなく「セグメント」で顧客を理解し、それぞれの価値観やライフスタイルに応じて最適な商品を提案し、顧客ごとのLTV(顧客生涯価値)を高める。
小売業ではID-POSをはじめとする顧客データを保有しながら、まだ十分に活用しきれていない面があるが、商品政策(MD)や出店政策といった政策にもデータを積極的に利活用するべきだ。ベイシアでは、21年8月にID-POSデータの分析ツールを導入した。データの効果的な活用によって、「マス」から「個」へ、従来のEDLPから顧客に寄り添うEDLPへと進化させていく。
また、CDP(カスタマーデータプラットフォーム)の導入も計画している。アプリケーションログを収集して購買データと紐付けて分析し、ロイヤルカスタマーを育成するために必要な機能やコンテンツ、サービスの発見につなげるのがねらいだ。