ビームスがライブコマースのシステムを自前で開発した、重大な理由とは?
スタッフからメディアのスターを育てる
とはいえ、ITシステムが整っても、肝心のコンテンツが充実しなければ意味がない。コンテンツ作りの主役となるのは社内スタッフだ。そこで、コミュニティデザイン部では、社内スタッフのさまざまな情報を引き出し、コンテンツとしてうまく具現化できるようにもサポート。その一環として、動画配信の“社内マスター”育成に力を入れている。
例えば、動画の撮影や編集のマニュアルを整備したほか、顧客からも人気のあった動画を、「どの部分がなぜいいのか」といった講評つきで社内に配信、ノウハウを共有するようにした。動画技術を向上させる社内講習会なども開催している。優れたコンテンツを制作したスタッフは年2回、「オンライン接客賞」として表彰する制度も設けた。金一封を進呈するほか、社内管理ツールでそのスタッフの功績を全スタッフに周知し、人事の評価基準にも加えている。
「独自の社内システムを開発し、動画の視聴者数、EC売上への貢献度といった指標について、コンテンツ配信を行なっている約2500人のスタッフの順位が、リアルタイムでわかるようにしました。中には、EC売上への貢献が年1億円を超える“カリスマスタッフ”も登場しています。とりわけ、20年からは、そうしたコンテンツ作りの名手を集め、所属部署とコミュニティデザイン部を兼務する『オムニ(omni)スタイルコンサルタント』として、コンテンツ制作の指導、ライブコマースでの実演などで活躍してもらっています」(同)。
矢嶋氏によれば、店頭での接客能力とコンテンツ作りの能力には、相関関係が見られるという。つまり、店頭での売上実績が高いスタッフはコミュニケーション能力に優れ、EC売上の貢献度も高いというわけだ。「動画配信では、ファッションに関する“うんちく”も、視聴者の評価を大きく左右することがわかりました。経験豊富なベテランをECで活用する余地も大きいという、新たな発見もあったのです」(同)。
同社がネット向けのコンテンツを強化してきたのは、「そもそもスタッフをメディア化することが、差別化の肝になると考えたから」と、矢嶋氏は主張する。「当社のミッションは、世界中から優れたファッションアイテムをセレクトし、お客さまにお届けすること。しかし、モノ余りの現在、店頭で商品を展示するだけでは不十分で、ブランドストーリーやバイヤーのこだわりといった“コト”の提案も必要になりました。そのため、語り部としてのスタッフの重要度は増しています」(同)。
コロナ禍を契機として、ライブコマースの普及も加速しそうだ。そうした中、「店頭の売れっ子スタッフが、ライブ配信を通じて全国区の“スター”に成長すれば、商品も1対1から1対多に拡販できるのではないでしょうか」と、矢嶋氏は目論んでいる。
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