無人決済1000店めざす!TOUCH TO GO阿久津智紀社長が語る「新しいコンビニの姿」とは

取材・文:若狭 靖代(ダイヤモンド・チェーンストア 記者)
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“サービスの引き算”と極小店舗の可能性

 TTG-SENSEがもたらす最大の恩恵は人手不足の解消だ。人手不足とそれに伴う人件費の高騰に苦しむCVS業界の状況を見れば、ファミリーマートがTTGとともに「24年度末までに無人決済1000店舗」と大きな目標を掲げたのにも納得がいく。TTG-SENSEの一般的な利用料金は月額50万円からで、1~2人程度の人件費相当で利用が可能だ。前述のサピアタワーS店は実際にスタッフの数を削減し、どの時間帯でも品出しなどに対応する1人のみで運営している。

 ただし、既存の店舗の機能をすべて無人店舗で再現できるわけではない。「どこを割り切るのかが重要。提携先企業と一緒に新業態をつくる、という感覚でいる。日本人はサービスを足していくことは得意だが、引き算することは苦手。わかりやすく削ぎ落としていくことがコストカットの面でも、ユーザビリティの面でもポイントになる」(阿久津社長)。対応できるサービスを増やせば増やすほどコストがかさみ、本来の効果が得られなくなっていく。いかに“割り切る”のかが、無人決済店舗を成功させるカギといえそうだ。

極小地向けの無人決済システム「TTG-SENSEMICRO W」を利用した「ファミリーマート川越西郵便局/S店」
極小地向けの無人決済システム「TTG-SENSEMICRO W」を利用した「ファミリーマート川越西郵便局/S店」。郵便局内のファミリーマート、という新たな形態を開拓した

 他方、無人決済が既存の施設に新たな機能を付与する場面も現れてきた。21年10月、極小地向けの無人決済システム「TTG-SENSE MICRO W」を利用した「ファミリーマート川越西郵便局/S店(以下、川越西郵便局S店)」(埼玉県川越市)がオープンした。店舗名のとおり、郵便局内の一角に誕生したファミリーマートで、店舗面積はわずか15㎡。約350品目を取り扱い、基本的な購入の流れはTTG-SENSEとほぼ同様だ。意外にも、郵便局での用事を済ませるついでに食品を購入して帰れる、という利便性が高齢者に受け入れられているといい、通常であればCVSの出店が難しい極小地で、いわゆるマイクロマーケットの開拓を可能にする同サービスは高いポテンシャルを秘めている。

 コンパクトな分、利用料金も月額20万円からと手頃。「極小店舗を複数出店し売上を積み重ねる、という使い方が可能になる。たとえば、一体どこに需要があるのかわからないような立地の自販機でも、設置していれば売上をつくることができる。つまり、そこに存在していることが大切。それが無人店舗に変わっていくイメージ」と阿久津社長は語る。

 「(CVSも)通常のサイズの店舗を1つ持つ、というこれまでの形態から、小さい店舗をいくつも持つ、というかたちに変わるしれない」とも話し、ファミリーマートがフランチャイズオーナーの収益改善策の1つとして検討している、既存のオーナーが少し離れたところにサテライトとして小型店舗を出店する、という方法とも方向性の一致が見て取れる。

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