フード&ドラッグの最注目店舗「イオンタウン幕張西店」のココがスゴイ
ハイクオリティな店舗だからこその課題
筆者はこれまでも大型の食品強化店舗を見てきたが、「あれもこれも」と商品を展開して商品政策の軸がぶれてしまっているケースは少なくない。店舗のテーマにそぐわない商品展開や通路をふさいでしまうようなランドリー陳列で、開店当初のよさが失われた店も見てきた。
一方、幕張西店は「お客さまの健康ステージを支え、地域の方が楽しめるコミュニティ拠点をめざす」というオープン当初の目的を忘れることなく、今日まで営業を続けている。憩いの場として提供している「ウエルカフェ」では、イベント終了後だったのか、ご年配の女性とスタッフが気軽に話をして盛り上がっていて、普段から地域とのつながっていると感じた。
ここまでクオリティの高い店舗を見たのは久しぶりで、良い点ばかり列挙したが、課題がないわけではない。いくつか挙げてみたい。まず感じたのは「今後5年、10年と営業を続ける中で、このクオリティを維持できるのか」という点だ。
年々働き手が不足している昨今、400坪以上ある売場のメンテナンスや業務に適切な人手と時間を割き続けることが果たして可能なのだろうか。現に、同店を訪れた際は、夕方の比較的混雑する時間だったのにもかかわらず、レジがフル稼働していなかった(4台中3台が稼働)。夕方の来客数が多い時間帯であること、売場規模を踏まえた客単価や購入点数を考えると、ピークタイムにレジをフルオープンしない理由はほとんどない。あるとするなら、「その時間に勤務できるスタッフがいない」というところではないだろうか(調査日は、レジから離れた酒類・飲料売場付近までお客さまが並んでおり、会計終了までそこそこの時間を要した)。自身が大型店に勤務していたときの経験からいえば、レジ4台分のメインスタッフにプラスしてレジサポートのサブスタッフが複数名ついていても不自然ではない。
また、上記の問題点を踏まえると、ハイクオリティな店舗であるがゆえに、同モデルの多店舗化は難しいようにも感じる。売場、とくにエンドの整然とした様や安定感は素晴らしい。棚はほこり一つなく、清潔で過ごしやすい空間となっている。しかしピークタイムにレジ要員を揃えられていないことを考えると、やはり人手不足感が否めない。安易に2店舗目3店舗目の出店に踏み出すのは長期的な視点で考えると厳しいのではないだろうか。
来客数に合った人員を配置していかなければ、お客さまや働くスタッフに不満が募り始め、それまでうまく回っていた業務も回らなくなってくるからだ。店舗運営する上で必要不可欠な「オペレーション」の部分が今後の課題になりそうだ。
ただ、売場の見栄えやPB商品の完成度は申し分なく、同店がフード&ドラッグでめざすべき理想の店舗の1つであることは間違いない。筆者の個人的な感想を大袈裟に言ってしまえば「完成系」に近いようにも思う。ウエルシア薬局にとって、この幕張西店はフード&ドラッグのモデル店舗の1つであると思われる。同店を皮切りに、このモデルを数多く出店し、より多くのお客さまに魅力を直接感じてほしい。筆者が住む地域にも出店してほしいと思わされる、魅力あふれる店舗だった。