米リージョナルの雄・ハイヴィーの旗艦店を3つのポイントで徹底分析!

取材・文:鈴木 敏仁

ハイヴィーの強さを理解するうえで、店舗戦略に目を向けないわけにはいかない。本拠地アイオワ州で2021年に開業した同社最大規模の旗艦店を訪れ、売場づくりと商品政策を分析した。

注目すべきは、今後の成長に大きく寄与するであろう3つのポイントだ。

開業時から変化を繰り返す売場

 2021年9月にハイヴィー最大面積となるフラッグシップストアがオープンした。場所はアイオワ州デモインズ郊外のグライムズ、フリースタンディングで店舗面積は9万3000平方フィート(約8640㎡)、その時点で考えられるすべての新しいアイデアや取り組みを導入し実験することを目的にしたと説明されている。

 開業当時の情報では、スキャン&ゴーによるレジなしショッピング、サラダ自販機、電子棚札、ベーカリーアイテムのデジタル注文端末、フィットネス機器の販売、ネイルバー、靴専門チェーンの「DSW」によるインストアショップ、カナダのロブロウズによるアパレルブランド「ジョーフレッシュ」などが導入されている。

ハイヴィー外観
グライムズ店のファザード、入口は右の食品サイドと左の非食品サイドの2つある。またネット通販のカーブサイドピックアップとドライブスルーファーマシーは左サイドの店舗横に位置している

 私が訪問したのは今年の4月なので3年半が経過したのだが、これらのうちで残っていたのは電子棚札だけである。これをネガティブに捉えるか、ポジティブに捉えるかは自由だが、私は実験しなければ何もわからない、進化もしないし変化もできないと考えているので、とにかくやって失敗したらさっさとやめる姿勢は評価する考え方である。

 こういった細かいトライアル&エラーはさておき、アメリカの優秀な食品小売企業は大都会ではなく辺境に存在するのだということを、この店舗を実見してあらためて実感したのであった。

 ウォルマートはアーカンソー州ベントンビル、パブリックスはフロリダ州レイクランド、HEBはテキサス州サンアントニオ等々、アメリカには知名度の高い都市から出発して成功し、そこに本拠を構え続ける食品小売企業はほとんどない。

青果売場
入口正面の青果売場。社員持ち株会社であることと、地元の中西部を誇るという、2つの意味を込めたコピーを大きなサインで表示する
アプリによるデジタル注文画面
アプリによるデジタル注文が可能で、テーブルまで運んでくれるサービスがあり、これを端末で説明している。また即配によるピックアップもここで対応する

即食、ビューティ、ECを強化

 このフラッグシップストアで注目したいのは3つである。

❶グラブ&ゴー、MTO、そしてイートイン

 アメリカでは総菜や即食商品などをまとめてグラブ&ゴーと総称し、この10年ほどをかけて徐々に充実させてきている。ディスカウント型なので廃棄ロスなどコスト増要因になりやすい総菜は限定的なアプローチとなるウォルマートでさえ、ここ数年売場を広げつつある。

 同店ではこれに「ミールタイム」と名称を付け、アイテム数を拡大し、入口に配し、頭上に目立つサインを設置して強調している。

グラブ&ゴー(即食商品)の売場
店内に入るとすぐ左にあるのがグラブ&ゴー(即食商品)の売場。「ミールタイム」と名称を付けてブランディングし、頭上のサインで視認性を高めている。業界に共通する強化分野だが、今のところここまで大きな売場としているのはHEBやウェグマンズなど強い企業に限られる
ミールタイム売場の手書きボード
ミールタイム売場の手書きボード。標準化やデジタル化が進むと、こういう一手間かけての訴求を忘れてしまいがちだ。店の“パッション”をお客に伝える有効なツールである

 注文を受けてからつくるメイド・トゥ・オーダー(MTO)とイートインは標準店舗でも展開しているのだが、この新店ではイートインスペースを拡大している。

 また併設のテーブルレストラン(名称はDining andBar)も標準店では青果売場周辺に出入口をつくっていたのを、このフラッグシップでは壁を取り払ってオープンにして売場と一体化させ、ついでにバーとの関連性を重視して大きな酒売場を併設させている。

 MTOはウェグマンズが有名だが、私が見る限りこの店舗は引けを取っていない。

マーケットグリル入口
入口右側に展開しているのが注文を受けてからつくるMTO部門で名称は「マーケットグリル」。日本食も“Nori”や“Hibachi”などブランド名を付けて展開
イートインスペース
ゆったりと取られたイートインスペース。日本のようにレジ外に位置するのではなく、青果売場の横の店内に位置させる
イートインスペースのバー
イートインスペースにはバーもある。ビールサーバーの本数が多く、ワインや蒸留酒も揃え、大型端末を5つ並べるなど本格的で、ご覧のとおり客数も多い。また写真の左奥が大きな酒売場となっている
酒売場
バーを通り抜けたところに別室として展開しているのが酒売場。品揃えは豊富でディスティネーション化している
菓子売場
菓子売場の先頭に目立つように据え付けられたキャンディステーション。菓子を強化するために新たに開発したもののようで、このフラッグシップと改装店舗にしかない
対面精肉売場
対面精肉売場の横にあるのが牛肉のドライエイジング(乾燥熟成肉)の展示。手間がかかりノウハウも不可欠で、価格が高くなるため通常は高所得層が住むエリアの一部の高級スーパーしか扱わない
コンブチャをセルフサーバーで提供する
コンブチャは発酵飲料のことでアメリカでは定番カテゴリーとなっている。これを手間がかかるセルフサーバーで提供するのも一部の高級スーパーに限定される。この店は定番売場にはめ込んでいる

❷雑貨の強さ

 これもHEBやウェグマンズにも共通しているのだが、

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取材・文

在米40年、現在はロサンゼルス在住。小売業界ジャーナリスト。年間訪問店数はのべ600店舗超、現場検証に基づいた分析をモットーとする。

著書

『ソリューションを売れ!』(ニューフォーマット研究所)
『誰も書かなかったウォルマートの流通革命』(商業界)
『アマゾンVSウォルマート ネットの巨人とリアルの王者が描く小売の未来』(ダイヤモンド社)

 

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