生活者の環境意識は高いが 10代の過半数は“エコ疲れ”
環境意識の高まりにより、生産から販売、消費、廃棄までを通して環境に配慮したサステナブル商品に対する需要が年々広がっている。メーカーだけでなく、小売店でもアルミ付き紙容器や冷凍食品包装、衣類や雑貨などの不要品を回収して再資源化するなどの取り組みを始めている。
SDGsの知名率は8割10代、70代の意識が高い
博報堂の「生活者のサステナブル購買行動調査2024年」(調査期間:2024年2月26日~27日、対象者:全国16~79歳の男女計5,158名)によると、「SDGs」について「内容を知っている」と答えた認知率は51.7%で昨年から4ポイント減少、「内容は知らないが名前を聞いたことがある」まで含めた知名率は80.7%となり、昨年から2.6ポイント減少した。
買い物の際に社会・環境に与える影響をどの程度意識しているかを聞いた社会購買実践度は、平均値が5.12点(10点満点)で、過去最高値の昨年の5.15点から微減した。
社会・環境のためになる行動をどの程度行っているかを聞いた社会行動実践度では、昨年の5.15点から5.28点に上昇。日々の行動の中で社会・環境のためになることをしようとする人が増えたと推察される。
年代別にみると、10代と70代で高い傾向。その一方で、10代の過半数が「社会や環境問題に取り組むことに疲れを感じる」と回答しており、“ エコ疲れ”を感じている様子がうかがえる。
また「普段、あなたが買物をする際に、以下のようなことをどの程度意識して買物をしていますか」という問いには、過去調査と変わらず「ミニマル(最小限)」「ロングライフ(長期的)」「サーキュラー(循環)」に関する項目が上位にあがった【図表】。
「売上の一部が環境や社会のために寄付される商品を買う」は、昨年から3ポイント上昇して4割超に。10~20代では約5割となった。若年層は「不要になったがまだ使えるものは人にあげたり売ったりする」「中古品を買う」「借りたりシェアしたりする」といった「サーキュラー」や「シェア」に関する行動のポイントが高くなっている。
メーカー各社で売上の一部を寄付する取り組みが活発
「ビジネスを通じて社会課題を解決する」ことをめざしているサラヤでは、創業当時から人と環境のことを考えた製品づくりを行ってきた。1971年には生分解性に優れたヤシの実由来の植物性洗浄成分を使用した「ヤシノミ洗剤」を発売し、台所用洗剤では初となる詰替えパックを82年に発売。
さらに、2004年にはパーム油の生産地でもあるマレーシア・ボルネオ島の森や動物を守る活動を開始。売上の1%を環境保全活動に還元する取り組みを行ってきた。
05年には日本企業として初となるRSPOに加盟。RSPOは、世界自然保護基金(WWF)を含む関係団体が中心となり設立された国際NPOで、持続可能なパーム油の生産と利用を促進することを目的としている。
10年には日本初となるRSPO認証パーム油を使用した製品の販売を開始した。RSPOに加盟する企業は増えており、メーカーだけでなく小売企業のプライベートブランドでもRSPO認証パーム油に切り替える取り組みが始まっている。
同社は「ヤシノミ洗剤」ブランドとして、16年にランドリーシリーズを発売。肌へのやさしさにこだわり、合成香料をはじめ、蛍光増白剤、着色料など肌トラブルの恐れのある成分は一切無添加にした。無香料を求めるユーザーから支持され、発売から右肩上がりを続けている。
J-オイルミルズは、プラスチック廃棄量やごみの量、CO2排出量の削減に取り組む一環として、紙パック(森林認証紙)を採用した「スマートグリーンパック®」シリーズを発売。プラスチック使用量は約60%、CO2排出量は26%以上、ごみの量は約1/2削減した。
この秋に3製品を発売し、ラインアップは12SKUとなっている。環境配慮だけでなく使いやすさでも支持され、順調に伸長している。同社では、昨年に続き、「スマートグリーンパック®」シリーズの売上の一部を寄付する「JOYLグリーンプロジェクト」を実施し、海洋・河川の環境保全に取り組む一般社団法人JEANに寄付している。
森永乳業ではこの冬、育児用ミルク「森永はぐくみ」「森永E赤ちゃん」「森永チルミル」各シリーズをリニューアル。各ブランドの大缶3品のスチール缶天蓋の厚みを減らすことで、製造時に排出されるCO2量を既存品より12%削減した。
また、「森永はぐくみ」「森永E赤ちゃん」の賞味期限を18ヵ月から24ヵ月に延長した。同社では粉ミルクでは唯一の詰替え用も発売しており、詰替えタイプは缶タイプと比べて、容器製造時のCO2排出量が63%少ない。同社では引き続き、健康課題に配慮した商品開発を進めていく。
不要品は捨てずに循環し「捨てない社会」を実現
近年、ごみ問題への関心が高まる中、小売店では不要品を回収して、再資源化する動きが活発だ。イオン九州は、不要品の回収・選別・再流通のインフラを構築するECOMMITと提携して、昨年から不要品回収を行ってきた。
今年9月より導入店舗を42店舗に拡大し、衣類・雑貨・ホビー用品の不要品回収を開始した。使わなくなった不要品を「回収」し、最適な使い道を「選別」、再活躍させる「リユース・リサイクル」の循環をつくり、捨てる以外の選択肢を提供し、捨てない社会を実現する。
また、日本政府が提唱するプラスチック資源循環戦略では、プラスチック資源について、30年までに容器包装の6割をリユース・リサイクルすることなどが策定されている。
これを受け、ニチレイフーズでは、冷凍食品包装(フィルム)のリサイクル実証実験を10月29日からイトーヨーカドー大森店で開始。複雑な廃棄物処理法上の知見を持つアミタと、パッケージ事業におけるさまざまなリサイクル関連技術の開発などを得意とするTOPPANが参画した。
回収したプラスチックは、クリップなどの樹脂加工品にリサイクルされる。
日本テトラパックは、ダイエーと連携し、兵庫県内の28店舗にて、アルミ付き紙容器の回収を11月1日から開始。アルミ付き紙容器は、主に豆乳や野菜ジュースなどに使われる紙容器で、内容物を光や酸素から守るため、板紙やポリエチレンコーティングのほか、アルミ層も張り合わされている。
この紙容器はリサイクル可能だが、現在のリサイクル率は非常に低く、多くが燃えるごみとして焼却処分されている。主な要因として、リサイクル拠点が地域限定的であったため、店舗や行政などの回収拠点が十分になかったことが挙げられる。
日本テトラパックは、今後もアルミ付き紙容器の回収・リサイクルを推進し、循環型社会の実現に貢献していく考えだ。
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