物流課題の解決を推進する三菱食品、カギはIT活用・作業の見える化・製配協業

兵頭 雄之(ライター)
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「余積シェアリング」で低積載率解消に取り組む

 人手不足への対応、配送の効率化、コストの抑制など、物流の課題はコロナ以前からも顕在化していたが、このコロナ禍をきっかけに、そうした課題への取り組みが加速している。

 同社では、北海道の既存物流センターに大型自動仕分け機を導入した。

 従前は取引先が各々店舗別に商品を仕分けして物流センターに収めてもらう必要があったが、導入後は、商品ごとの総量納品で、仕分けに対応できるようになった。これにより、物流センターの人員を半減させることが可能だという。

 また、自動仕分け機により、小売側のカテゴリーに再編して仕分けしておくことも可能だ。こうしておけば、小売側の作業量削減にもつながる。

 物流センター内での一人ひとりの作業の見える化にも着手している。

 たとえば、業務の作業状況や作業コストを可視化するクラウド型システムをテスト導入。作業者自身がセンター内での作業をタブレットに登録、そのデータをクラウド上で管理することにより、リアルタイムでの進捗の把握、一人あたりの生産性の計測なども可能だ。

 「作業者にも、管理する側にも負担なく利用でき、物流センター間の生産性比較の材料にもできるため、改善の打ち手が策定しやすく、改善効果の試算もやりやすい」(同)

 トラックの低積載率の解消にも積極的に取り組む。

 三菱食品では、年1回、メーカーを招待して、「三菱食品プレゼンテーション」を開催している。2021年の開催の場において、製配協業の取り組みとして、トラックの空きスペース(余積)を企業間でシェアし、物流積載率の向上につなげる「余積シェアリング」を21年度中にもスタートさせることを明らかにした。

社員の2割以上をデジタル人財に育成

 「コロナ禍での経験がDX(デジタルトランスフォーメーション)を後押ししている」と、小谷氏は語る。

 DXはシステム導入や専門部署の設置で終わりというものではない。D Xを動かし続ける組織や人材がなければ、変化の激しい時代に「乗り遅れる」ことになる。

 そこで同社では、研修会やオンライン動画によるOFF-JTとプロジェクト参画によるON-JTを組み合わせたデジタル人財基盤の構築を目指している。

 具体的にはレベル1は「デジタルプロジェクトの担当者」、レベル2は「個別プロジェクトのプロジェクトリーダー」、レベル3は「業界横断で複数のプロジェクトを束ねることができる人財」に区分し、2、3年で全社員の2割以上を、デジタル人財として育成するという。

AIによる需要予測、地域活性化もサポート

 小売業は「変化対応業」だ。その小売を下支えする卸への期待は大きい。

 たとえば、AI(人工知能)による需要予測だ。三菱食品の売上の約4分の1を占めるローソンへの出荷データ、販促キャンペーンの展開情報などをもとに、受注数量を予測し在庫を適正化するというもので、三菱商事、NTT、三菱食品等で開発を進めている。

 「まだPoC(Proof of Concept:概念実証)の段階だが、将来的には、食品スーパーでの応用も考えている」(同)

 コロナ禍で大きく伸びた取引にネットスーパーがある。

 ネットスーパーの配送方法としては、自社倉庫や物流センターから、店舗在庫から、あるいは専用のM F C(マイクロ・フルフィルメント・センター)から等があるが、完全な成功パターンというものはまだない。

 「ネットスーパーをはじめとして、『商品お届けビジネス』の手伝いがどのようにできるか、成功パターン構築のサポートができるか、といったことも検討していきたい」(同)

 同社は2021年5月、2023年度を最終年度とする3カ年の中期経営計画「中経2023」を公表。その中で、同社として初めて地域における食品流通を起点とした取り組みを打ち出した。

 いま日本では、少子高齢化による人口減少、都市への一極集中などにより、地域の活性化が課題になっている。SMをはじめとした、地域に根差す小売業にとっては、事業継続に深く関わる問題だ。

 三菱食品では、省庁や自治体などとの連携や、地域企業からの声を吸い上げながら、地域活性化をサポートし、地域の小売業の繁栄にもつなげたいと考えている。

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