プロショップを支える「頼れる商社」顧客からの差別化要望にモノづくりで提案を図る=注目企業研究 丸政
職人から強い支持を得る丸政のモノづくり
現場のプロの職人の声に耳を傾け、それらを品揃えやサービスに反映させてきた丸政。さらに近年は、その手法を生かし、独自製品の開発にも積極的に取り組んでいる。
営業本部本部長の石井康孝氏は「私が入社した40年以上前から、お得意先さまを訪問すると、もっと使い勝手のよい商品への要望、ヒントを聞く機会が多々ありました。当社は商社ではありますが、そうした声を商品開発に生かせないかと考えてきました」と明かす。
独自商品の開発をめざすなか、転機となったのが、大工道具や刃物のメーカーである外栄金物を、2008年にM&A(吸収合併)で傘下に収めたことである。同社は、金物の産地として有名な新潟県三条市にある創業1911年の老舗企業で、ユニークな製品群を数多く持っていた。
そのひとつとして挙げられるのは「工具ホルダー」だ。職人が腰に巻くベルトに装着し、各種工具を身に付けておくための製品で、今ではHCなどでよく目にするが、実は日本で製造・販売したのは同社が初めてだという。根強い人気があり、現場からの声を参考にラインアップの拡充を図っている。
また、建築現場の足場を立てる際に使用する「足場ハンマー」も支持を得る商品。モノづくりにあたっては安全第一を掲げており、商品の強度を増すように熟練した職人がハンマー面にフックを1本ずつ手作業で溶接するほどのこだわりようだ。丁寧な工程を要するため、2017年の発売以来、生産が追い付かないほどの人気を博している。
さらに、昨今プロショップから「顧客層の若返りをしたい」「もっと職人に支持される店になるには?」「HCの工具売場と差別化をしたい」という要望が増えてきたことを受けて、「全ては職人さんの為に」を合言葉に、「性能×デザイン×付加機能」をコンセプトとするブランド「GranGear(グランギア)」を立ち上げた。その名に「最良の道具」の意味を込めたオリジナルブランドである。国内の一流メーカーと連携し、機能や品質、デザインにこだわった製品で、着実にラインアップを強化している。
「プロショップをはじめとしたお取引先さまから、差別化につながる商品や売場づくりへの要望が強くあったのが、開発のきっかけです。機能、品質、デザインの面で、プロの職人さんにご満足いただけるブランドをめざしています」と石井本部長は語る。
例えば「ヘルメット ヴェンティー」はトーヨーセフティーとの共同開発。「ミリタリーグリーン」「デザートカラー」「マットネイビー」「ダークグレー」の4色を取りそろえる。いずれも既製のヘルメットにはないカラー展開で、ファッションにこだわりのある若い職人の注目を集めそうだ。
そのほかにも、ハタヤリミテッドとはコードリール全13アイテムを、リングスターとはツールボックスを、アルインコとは脚立を、ムラテックKDSとはレーザー墨出器のオールインワンセットを共同開発。京セラインダストリアルツールズとは「KYOCERA」ブランドの電子丸ノコを収納できる「丸ノコケース」を企画するなど、展開は多岐に渡っている。
高いデザイン性は「グランギア」のすべての製品に共通する特長で、30歳代を中心とする若い職人を中心に、高い支持を獲得している。価格は一般的な製品と比べて15%ほど高いものの、売上は毎年約140%で伸長。いずれの製品も出せばすぐに売れるほどの人気を博している。プラスワン(長野県/矢崎金雄社長)、ハードストック(静岡県/遠藤健夫社長)をはじめとした多くのプロショップのほか、HCにも取り扱いが広がっている。
「『グランギア』の商品は、丁寧に作られているので納期に時間がかかり、品薄状態が続いています。お客さまにご迷惑をおかけしていることが大変申し訳ないです。」(石井本部長)
また、型枠職人専用の工具メーカーのRtbとは独占契約を締結。同社は型枠職人が自ら立ち上げた会社で、「ピーコンビット」をはじめとした商品群は、職人から絶大な支持を得ているという。
石井本部長は「『グランギア』に加えて、新ブランド投入も準備しています。これからもプロショップ、HC企業さまの差別化戦略のお役に立てるよう、さらにこだわった新製品を開発していきます」と今後の展開に意気込みを見せる。