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コストインフレが危惧される物流の「2024年問題」効率化の努力は必須の状況に

働き方改革が進むトレンドの中で、2024年4月1日から「自動車運転業務における時間外労働時間の上限規制」が適用される。物流需要が増すなかで、すでに問題化しているトラックドライバー不足はさらに加速し、全体として物流コストの急上昇につながる「物流コストインフレ」が危惧されている。

増える物流需要に対し、トラックドライバーは減少傾向

 物流の需要に対して供給が追いついていないことから、物流危機が指摘されている。

 需要サイドから見ると、ECの拡大による宅配便の急増や、多品種・小ロット輸送の増加によるトラック積載効率の低下などが指摘されている。

物流需要が増すなかで、すでに問題化しているトラックドライバー不足はさらに加速し、全体として物流コストの急上昇につながる「物流コストインフレ」が危惧されている。(i-stock/Milos-Muller)

 一方、供給サイドを見ると、トラックドライバー不足が深刻だ。競争が激化するなかで、ドライバーの労働環境が悪化し、2000年代後半以降、ドライバー数は急減している。

 さらに2019年4月1日に施行された働き方改革関連法による「時間外労働の上限規制」では、時間外労働の上限を定めており、大企業では2019年4月から、中小企業では2020年4月から施行された。

 ただし、「自動車運転の業務」などいくつかの分野については、時間外労働の上限規制の適用が2024年まで延期されている。これが「物流の2024年問題」としてクローズアップされている。

「 フィジカルインターネット」で、究極の物流効率化をめざす動きも

 経済産業省が2021年に発表した資料「物流危機とフィジカルインターネット」では、こうした環境が、物流コストインフレという構造的な問題につながってきたと指摘している。また近年高まっているカーボン・ニュートラルの要求も、物流供給を圧迫する結果につながる。

 同資料では、物流コストインフレは、いずれ物流需要の減退を招き、成長を制約する構造的な要因になるほか、さらに放置すれば、2020年代後半には物流危機(適正なコストでモノが運べなくなる事態)が危惧されるとしている。

 これに対して、今後は物流の効率化の徹底により、物流コストを圧縮しつつ、労働環境の改善や賃上げによって、ドライバーの供給を増やすべきとしている。

 さらに究極の物流効率化として「フィジカルインターネット」という考え方もあげられている。インターネット通信の考え方を、物流(フィジカル)に適用した新しい物流の仕組みで、RFIDに代表されるIoTやAI技術を活用することで、物資や倉庫、車両の空き情報等を見える化し、規格化された容器に詰められた貨物を、複数企業の倉庫やトラックなどをシェアしたネットワークで輸送するという共同輸配送システムの構想だ。

 経産省・国交省では共同で、「フィジカルインターネット実現会議」を組織し、2040年までのロードマップを作成し、アクションプランをまとめている。

 こうした動向に今後も注目していく必要があるが、物流を戦略のひとつとして重視していく企業としての姿勢も重要になってくるだろう。

 物流の能力が競争力を左右する時代性を認識し、統合したサプライチェーン・マネジメントの確立に向けて、デジタル技術をフル活用し、経営を変革していく必要があるだろう。