イオン、トップバリュ3品目だけ値上げ! 価格維持のために行う3つの取り組みとは 

湯浅 大輝 (ダイヤモンド・チェーンストア 記者)
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価格凍結宣言で売上好調 委託先との「協働」重視

 イオンは21年9月以降、トップバリュの商品の価格を据え置いているが、21年9月から22年6月までの「価格凍結宣言」期間の売れ行きは好調だったという。同期間の販売金額ベースでは、食料品・日用品を含むトップバリュ商品は「(対前年比で)2ケタ近くの伸長を続けている」(和田氏)そうで、特にナショナルブランド(NB)商品で値上げが著しい「マヨネーズ」では対前年比約40%増、「レギュラーコーヒー」では約70%増と、お客の生活防衛意識が高まるなか、支持を拡大させてきた。

 「原価高騰により、商品の値入率は減少するが、販売数量が好調であれば、粗利益額は一定程度獲得できる。今後も粗利益額に注目していかなければならない」(和田氏)

 会見では、「イオンが価格を据え置くことによって、メーカーや食品スーパー(SM)が値上げに踏み込めないという背景もあるのではないか」という質問も飛び出した。これに対し、和田氏は、「イオンが、委託先メーカーに『仕入れ原価を上げない』と言ったことはない。売価の設定はあくまでイオンの責任だ」と断った上で、「どのメーカーも、値上げを“良し”としているのではなく、“仕方ないので値上げをする”と考えているのが実情だろう。それならば、イオンは委託先メーカーと一緒になって、“どうすれば無駄を省いて価格を維持できるのか”“付加価値の高い商品をつくれるのか”と考えるほうが生産的だ」と話した。

 「原材料価格の先行きは不透明だ。今後は、委託先メーカーとともに原料の調達方法を考えたり、新しい商品開発に取り組んだりする、“イノベーション”の発想で難局を乗り越えたい」(和田氏)

 トップバリュは価格訴求型の商品がメーンだが、今後は「健康」や「オーガニック」、「プレミアム」といった価値訴求型の商品も拡大していく考えだ。たとえば、「プレミアム生ビール」(168円)は22年3月に販売開始したが、売れ行きは好調で、6月時点で累計500万本、7.5億円の売上を記録しているという。

 「イオンに来店されるお客さまは『生活の基本となる商品を揃えたい』という方々。満足できる品質で少しでも安い商品を展開することは我々の責務だ。今後はそれに加えて、『楽しい』や『ワクワク』する価値訴求型の商品も揃えることで、より多くのお客さま支持を獲得したい。そのためには、売場のなかで『トップバリュ』の商品の構成比を上げていくことになるだろう」(和田氏)

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記事執筆者

湯浅 大輝 / ダイヤモンド・チェーンストア 記者

1996年生まれ。シンガポール出身。同志社大学グローバル・コミュニケーション学部卒業後、経済メディアで記者職に就く。フリーライターを経て、2021年12月ダイヤモンド・リテイルメディアに入社。大学在学中に1年間のアメリカ・アリゾナ州立大学への留学を経験。好きな総菜はローストビーフ、趣味は練馬区を散歩すること。

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