牛乳・乳飲料市場、機能を強化した乳飲料が好調、外出自粛生活で健康意識がアップ!

山田陽美(ライター)
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カネカ、コクがあるのに後味すっきり!パンのおいしさを引き立てる「パン好きの牛乳」

2018年にベルギーのピュアナチュール社と技術提携を結び、乳製品事業に新規参入したカネカ。同年4月には高品質でおいしさを追求した「パン好きの牛乳」を首都圏や関西のベーカリーなどで販売開始。パンが好きな人からの人気を集め、シリーズ累計500万本を出荷した。同社の快進撃をレポートする。

酪農家支援を目的に乳製品事業を立ち上げ

カネカの「パン好きの牛乳」他シリーズ

 住宅の断熱材や太陽電池、樹脂、医薬品など、さまざまな分野で素材提供を行う化学メーカーのカネカ。食品事業にも創業当時から力を入れており、イースト菌やショートニング、マーガリンなどのベーカリー向け原料の製造も行っていた。

 社会的課題解決に取り組んでいた同社が注目したのが日本の酪農業について。後継者不足や労働力不足など厳しい環境にさらされ、酪農家戸数は減少の一途を辿っている。そこで同社は、酪農家とともに持続可能な酪農をつくりあげることを事業展開の理念として取り組みはじめた。2018年1月にベルギーのピュアナチュール社と技術提携。ピュアナチュール社は、有機乳製品をヨーロッパ各国に展開している企業で、牛乳やバター、ヨーグルト、フレッシュチーズなど乳製品は、ヨーロッパ各国で高く評価されている。

 こうした経緯で、乳製品事業がはじまり、その第一弾として発売したのが「パン好きの牛乳」だ。

カネカ乳製品事業開発Strategic Unit販促企画チーム チームリーダー 天川隼人氏と乳製品事業開発Strategic Unit販促企画チーム 齋藤智夏氏
乳製品事業開発Strategic Unit販促企画チーム チームリーダー 天川隼人氏と乳製品事業開発Strategic Unit販促企画チーム 齋藤智夏氏

 商品開発を進めるにあたって、牛乳の市場調査を行ったところ、厳しい現状が待ち受けていた。牛乳はコモディティ化が進み、市場は長期的なダウントレンドが続いている。ユーザーもファミリー層とシニア層が中心で、20~30代の若年層は牛乳離れが進んでいる状況だ。

 そこで注目したのが昨今のパンブーム。牛乳が登場する食卓に、パン類が同時に出現するのは7割強と高い。だが逆に、パンを食べる時に牛乳を飲む人は3割となっている。牛乳からみた場合、パンとの親和性は高いが、パン側からみた場合、牛乳はまだまだポテンシャルがあると考えた。

 牛乳を飲まなくなった理由を調べていくと「味にクセがある」「飲んだあとに口に残る」「ニオイが嫌い」といったように味覚面が飲用減少に大きく影響を与えていることがわかった。

 そこで同社では、北海道生乳とピュアナチュール社の技術を使い、パンのおいしさを引き立てる生乳本来のコクと、パンの風味を邪魔しない後味のすっきりさが特長の「パン好きの牛乳」を開発した。ピュアナチュール社の技術を基にした殺菌方法は、加熱によるダメージが少なく、フレッシュな味わいを楽しめる。

 こうして新技術と厳選した素材を組み合わせ、パンと牛乳というシーンを想起させる商品で市場に参入した。

乳製品事業の概要とパン好きの牛乳シリーズ出荷本数

販売店舗数は1万店舗まで拡大
さらなる販路拡大をめざす

 「パン好きの牛乳」は、ベーカリー業界とのつながりを生かし、首都圏や関西のベーカリーショップで販売を開始。「コクがあるのに後味すっきり」と好評で、20~40代のパン好きの女性を中心に人気を集め、月間600本を販売するパン屋もいるほどだ。通常の牛乳に比べ、価格は高くなるが、販売ルートが限定されている特別感やターゲットに伝わりやすいストレートなネーミングも後押しし、トライアルが進み、おいしさでリピート購入につながっている。

 「高級食パンなどのブームもありますが、ベーカリー業界も少子高齢化で縮小傾向にあります。これまでお世話になってきた業界を盛り上げたい、という思いもあり、今回の商品が誕生しました」(乳製品事業開発Strategic Unit販促企画チームチームリーダー・天川隼人氏)

18年5月開催の「青山パン祭り」に参加したカネカ
18年5月開催の「青山パン祭り」に参加。インスタグラムに数多く投稿され、一気に認知が広がった

 同社では18年5月に行われた、パン好きが集まるイベント「青山パン祭り」に初参加。その時の様子がインスタグラムで投稿されたことで、一気に認知が広がっている。それに合わせて、メディアでの露出も高まり、出荷数は急上昇し、19年を100とした場合、20年は4.8倍の出荷数となった。

 300店舗のベーカリーショップからスタートした店舗数も現在は1万店舗にまで広がっている。今後はさらにスーパーマーケットやコンビニエンスストアでも販路拡大をめざしていく。

 「これまで牛乳から離れていた人を、パンをフックに取り込むことができれば、既存品とカニバリすることなく、市場を盛り上げることができそうです」と、天川氏は考えている。

ユーザーの要望に応えた「パン好きのミルクティー」

 牛乳に続く第二弾として19年4月に発売したのが「パン好きのカフェオレ」。カフェオレとパンは、一緒に食べる割合が8割を超える定番の組み合わせだが、「もっとパンのおいしさを味わえるカフェオレが欲しい」という要望があることがわかった。そこでパンとの相性にこだわり、北海道産の生乳を贅沢に使用し、コーヒー豆は深みのある味わいが特長のグアテマラ産を使用した。原材料は生乳・砂糖・コーヒーのみのシンプルな設計で、着色料・香料は不使用だ。同商品の生乳もピュアナチュール社の技術を採用しているので、生乳本来のコクに、すっきりした後味となっている。

 ユーザーからは「ミルクが濃厚でまろやかなので、パンがより食べやすい」「甘さ控えめでパンの甘みが引き立つ」「パンとの相性がよい」などの意見が寄せられている。

 カフェオレの発売により売上が加速し、21年3月末時点で「パン好き」シリーズは累計500万本を販売するまで拡大している。

 さらに今年1月には、「パン好きのミルクティー」を新発売。北海道産の生乳に、紅茶は世界でも希少なダージリン茶葉を100%使用。濃厚なミルク感や本格的な紅茶感に加え、後味のすっきりした味わいのミルクティーになっている。

 2019年秋からは、テレビCMを投下。モデル・女優の知花くららさんを起用し、パンとの相性のよい牛乳やカフェオレを訴求している。今年も年間を通じてテレビCMを投下していく予定だ。

 今後は、ヨーグルトなどの乳製品や同社のサプリメント素材と組み合わせた機能性食品なども開発し、全国で展開していく計画だ。

モデル・女優の知花くららさんを起用したカネカのテレビCM
モデル・女優の知花くららさんを起用したテレビCM。パンに合う牛乳であることを訴求

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