冷凍食品、多様化する消費者ニーズにこたえ コロナ禍明けも堅調に推移

文:石山 真紀(フリーライター・売場研究家)
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簡便性の高さや保存のしやすさからコロナ明け以降も堅調に推移している冷凍食品のマーケット。

売場が広がったことでワンプレートの冷凍弁当類や中華麺、和洋菓子など新たなカテゴリーの取り扱いも増えてきている。

冷凍食品 イメージ
昨今の電気代高騰の影響から、省エネ設計の冷凍ショーケースを導入する企業が増えている(i-stock/Drazen Zigic)

冷凍野菜やフルーツなど冷凍素材が好調に推移

 KSP-POSデータによると、2024年4月から25年3月の冷凍食品カテゴリーの期間通算金額PIは前年同期比0.2%減の5万0141円、数量P Iは対2.8%減の178.7となった。

 月別の金額PIの傾向を見ると、24年4月から12月までは、8月、11月を除き前年に対し微減で推移していたが、25年1月以降はプラスへ転じている。

 冷凍食品はチャーハンやピラフなどの米飯類、餃子やシューマイなどの中華総菜、ピザやグラタンなどの洋風総菜、冷凍野菜やフルーツをはじめとした素材系など、商品バリエーションの豊富さも魅力となっている。

 サブカテゴリー別の金額PIを見てみると、冷凍野菜をはじめとした冷凍素材に加え、冷凍スナック、冷凍菓子、冷凍米飯、冷凍総菜・調理、冷凍ユニバーサルデザインフードが、前年超えとなった。一方で、冷凍製菓・製パンや冷凍めん類、冷凍弁当用おかず、冷凍調味料などが前年を割り込んでいる。

 コロナ禍で需要が一気に拡大した冷凍食品のカテゴリーは、アフターコロナに入り、以前ほどの勢いはないものの、価格改定などの影響で他カテゴリーが苦戦する中、現在も堅調に推移している。

 この消費動向を受けて流通各社超でも冷凍食品コーナーを拡大する動きが加速。レイテックによると昨今の電気代高騰の影響から、省エネ設計の冷凍ショーケースを導入する企業が増えている。

 同社は今春、次世代型プラグインショーケース「REI THE STANDARD」を発表。高いデザイン性や機能性を担保しながら省エネ性能を高めた同ブランドを、同社のスタンダードモデルとして展開していく。

冷凍食品の金額PIおよび金額PI対前年推移

リーチインケースでも見やすい売場づくりを

 冷凍食品の利用者増に伴い、メーカー各社は多様化する消費者ニーズにこたえる商品を展開している。

 マルハニチロは赤坂璃宮 譚オーナーシェフ監修の「新中華街」シリーズから、プレミアムラインの「赤坂璃宮の海鮮炒飯」と4種の醤を使用した本格的な味わいの「辣醤麻婆焼そば」を発売。

 ニッスイは白飯と相性のよいおかずをセットにした1食完結型の家庭用冷凍食品「まんぞくプレート」シリーズに、揚げたスケソウダラと彩りのよい5種の野菜の黒酢あんをセットにした「ふっくらごはんとたらと野菜の黒酢あん」を投入した。同社は本年4月より「まんぞくプレート」シリーズのテレビCMを全国放映しており、ブランドの認知拡大に努めている。

 ニチレイフーズの「everyONe meal」は素材の味や香辛料を生かした調理法で配合をコントロールする、同社独自の「おいしさ再現技術」を採用。100gあたりたんぱく質を9g以上配合した、毎日の食事で手軽にたんぱく質が摂取できるメニューを展開している。

 簡便性や即食性に優れた冷凍食品は、忙しい現代人の生活様式にマッチした商品であり、売場の拡張を検討する価値は大いにある。今期については野菜や米の価格高騰に伴い、冷凍野菜や冷凍米飯類の需要拡大も期待できるだろう。

 近年、オープンケースではなく省エネタイプのリーチインショーケースを採用する店舗が増えていることから、カテゴリーごとにケースや棚の段を分けるなど、魅せ方や視認性を高める工夫も重要になってきそうだ。

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