SDGsで先行する欧米食品スーパーの現状は?ウォルマート、クローガー、テスコの事例を紹介
クローガーは食品ロス削減に本腰
米食品スーパー(SM)最大手クローガー(Kroger)は、17年9月に策定した「ゼロハンガー・ゼロウェイスト(ZeroHunger ¦ Zero Waste)」で「25年までに飢餓と食品ロスのゼロ」を目標に掲げ、SDGsの目標2、目標12と連動させてこれに取り組んでいる。
クローガー傘下のデータ分析会社84.51°がコロナ禍に実施した米国消費者調査では、35%が「コロナ禍を機に食品廃棄をより意識するようになった」とし、約半数が「食品の期限切れが食品廃棄の最大の要因となっている」と回答。クローガーでは、このような消費者意識の変化を受けて、プライベートブランド(PB)の食品を対象とした期限表示のシンプル化や人工知能(AI)を活用したレシピツール「シェフボット(Chefbot)」のリリースなど、家庭での食料廃棄量の軽減をサポートする施策に取り組んでいる。

また、リサイクル専門ベンチャー企業テラサイクル(TerraCycle)との提携により、先進的なリサイクルプログラムにも着手した。20年8月から、オーガニック専門PB「シンプルトゥルース(Simple Truth)」の300品目以上を対象に、包装材を消費者から回収し、リサイクルしている。
プラ削減に取り組む英テスコ
英SM 最大手テスコ(Tesco)は、17年に「リトル・ヘルプス・プラン(LittleHelps Plan)」を策定し、SDGs の目標2、目標3、目標5、目標7、目標8、目標12、目標13、目標14、目標15と連動させて、社会的課題や環境対策に取り組んでいる。21年1月には、小売企業として世界で初めて、温室効果ガス排出量の削減目標と連動させた「サステナビリティ連動債(SLB)」を発行した。発行額は7億5000万ポンド(約1102億円:1ポンド=147円で換算)だ。
コロナ禍で消費者の健康志向や環境意識が高まるなか、テスコは、20年9月、英国の小売企業として初めて「代替肉の売上を25年度までに対18年度比3倍に拡大させる」との目標を掲げ、品揃えの拡充やイノベーションの推進に取り組む方針を示した。19年6月に策定した「リムーブ・リデュース・リユース・リサイクル(Remove,Reduce,Reuse,Recycle)」のもと、PBの商品を中心に、プラスチック製容器包装廃棄物の削減にも積極的に取り組み、20年末までに商品10億点分の使い捨てプラスチック包装材を削減した。

業界の枠を超えた取り組みも
SDGs の目標12.3(30年までに世界全体の一人当たりの食品廃棄物を半減)にサプライチェーン全体で取り組む動きも本格化している。テスコ、ウォルマート、クローガー、イオン(千葉県)ら、世界の食品小売大手10社がそれぞれ20社以上のサプライヤーと提携し、30年までに食品廃棄量の半減をめざすイニシアチブ「10x20x30」では、20年9月、ケロッグ(Kellogg)、ネスレ(Nestlé)、ユニリーバ(Unilever)など、約200社のサプライヤーがサプライチェーンにおける食品廃棄量の削減にコミットした。
コロナ禍では、地球環境問題や社会的課題への消費者意識の高まりが、欧米のSMのSDGsへの取り組みを後押ししている。また、社会的な機運の高まりから、ステークホルダー全体を巻き込んだ取り組みや異業種とのコラボレーションも活発になってきた。
消費者の意識や購買行動の変化を的確にとらえて自社のSDGs への取り組みと連動させ、商品やサービス、オペレーションに反映させることでより多くの消費者から支持を獲得するという好循環を生み出せれば、自社の事業を成長させながら、食を軸としたサステナブルな社会の実現にも大いに貢献できるだろう。
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