家の中まで届けるウォルマートのインホーム・デリバリー、安心感を生み出すテクノロジーの正体

崔 順踊(リテールライター)
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プライバシーや安心を担保するテクノロジーの活用

 さて、インホーム・デリバリーは、「ウォルマート+(プラス)」の会員となり、月に19.95ドル(約3000円)または年会費138ドル(約2万円)を支払うことで利用できる。ユーザーは週7日毎日利用でき、配達は午前9時~午後6時までとなっている。

 顧客はオンラインで食品など生活必需品を注文し、配達オプションの中から「インホーム」を選ぶと、マナーやセキュリティなど特別な訓練を受け、制服にボディカメラを装着した配達員(アソシエイト)がスマートロックのワンタイムパスワード(1回限りの解除パスワード)によって顧客のキッチンまたはガレージ等指定された宅内に入る。

 商品を指定場所に届けた後、アソシエイトは触れた場所をすべて消毒し、ロックをかけ自宅から離れるように教育されている。利用者には、当日朝の配達時間帯、注文配達時、アソシエイト到着時にそれぞれ通知が届く。また、アソシエイトがワンタイムアクセスコードを取得し宅内に入るときからボディカメラの映像が録画され、そのライブ映像をいつでもインホームアプリを介し携帯電話から見ることができる。一連のお届けおよび録画配信が終了すると通知が再び届き、最大7日間配達時の動画を表示することができる。

利用者の安心感を醸成する取り組みは……

 同サービスの重要なキーデバイスとなっている「レベルロック(スマートロック)」、または「ガレージドアオープナー」は、49.95ドル(約7500円)で購入・設置してもらうことができ、HPまたはアプリによってキッチンまたはガレージへの配達を設定できる。そのほか、自宅やガレージにキーパッドがある場合は、インホームアプリにリンクするだけで、セットアップが完了する仕組みとなっている。

 ウォルマート・ドットコムで購入後、返品を希望する商品についても、アソシエイトが商品を届けた時に引き取ってくれることや、アソシエイトに対するチップが不要な点もメリットとなっている。

 アソシエイトは最低1年間の雇用が必要とされており、VRなどを駆使した教育訓練も施される。また、店舗内での勤務よりも1.5ドル(225円)高い給与とフルタイムのポジション、各種医療保険などの福利厚生も受けられる。配達地域も限定されており、毎回ほぼ同じ人物が担当することから、顧客のプライベートに関する安心感も醸成している。

 新たなサービスとして同社はこの秋から循環型再利用プラットフォームであるLoopと提携し、一部地域のサービスユーザーに向けて、詰め替え可能・再利用可能な容器に入った製品を購入できるようにした。製品使用後の空容器はアソシエイトが指定場所から回収し、消毒および再補充され店頭に戻される。

 同社の競合であるアマゾン(Amazon.com)では食品を利用者のガレージまで届ける「キー・イン・ガレージ・デリバリー(Key In-Garage Delivery)」を提供しているが、こちらは“冷蔵庫の一歩手前”と言えよう。顧客満足度の向上と同時にセキュリティやプライバシーなど不安要素も含むラストマイル戦略が、テクノロジーや従業員教育によってどこまで信頼性と安定性を確保し拡大していくのか、今後も目が離せない。

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