日本政府も見習えば?景気回復・スマホ決済率アップの2兎を追う香港の政策とは

牧野 武文(ライター)
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真のねらいはスマホ決済の浸透?

 この電子消費券の大きな目的はコロナ後の経済回復にあるが、香港政府はそれと同時にスマホ決済の普及もねらっている。

図表❷香港の主なキャッシュレス決済サービス
電子消費券の受け取りに指定された4つのキャッシュレス決済。景気浮揚だけでなく、キャッシュレス社会を進展させる効果も大きい

 一口にキャッシュレス決済と言っても、「クレジットカード」「電子マネー」「交通カード」といった物理的なカードによる決済と、「QR コード」「NFC」を利用するスマホ決済では、その波及効果は大きく異なる。前者は現金を電子化したにすぎないが、スマホ決済はスマホの機能と連動させることにより、モバイルオーダー、フードデリバリー、電子チケット、店舗出荷型ECといった新しい消費スタイルを可能にしてくれる。

 また、カード決済は銀行口座の保有が前提となる。そのため、銀行口座保有率が高くない東南アジア諸国ではスマホ決済が急速に浸透し、消費スタイルは大きく様変わりしている。とくにインドネシアは約2億7000万人の人口のうち半数が30歳以下と若く、携帯電話普及率は127.5%と、スマホを軸とした消費領域でのデジタル革命が進行中だ。

 ところが、アジア圏の中で日本、台湾、香港ではスマホ決済の普及がなかなか進んでいない。これらの地域では早い段階でクレジットカードと交通カードが普及したため、スマホ決済への関心が高くないからだ。しかし香港や台湾は、個人消費のDX(デジタルトランスフォーメーション)という観点で、スマホ決済の普及率の低さに危機感を持っているのだ。

 ちなみに香港では、19年に行われた店舗での対面決済のうち、56%がクレジットカードで、26%が現金、スマホ決済は14%。しかし、今回の電子消費券の配布で、スマホ決済の利用者が急増し、24年にはスマホ決済が36%まで伸び、現金決済はわずか1.6%になると予測されている。

ライター 牧野武文
ライター 牧野武文

 香港は、コロナ対策で電子消費券を配布することで、景気の浮揚とスマホ決済をメーンとしたキャッシュレス社会の進展という二兎を追い、成果をあげようとしている。

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