苦境のTポイントに急成長のPayPayポイント……共通ポイントサービスの現在地

2023/01/06 05:55
リテールライター:崔順踊
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経済産業省が2022年6月1日に発表した2021年のキャッシュレス決済比率は32.5%となった。また、矢野経済研究所の推計では2021年度のポイントサービス市場の規模は2兆1001億円で、2022年度には2.5%増の2兆1533億円を見込んでいる。
政府はキャッシュレス決済比率を2025年までに4割程度、将来的には8割までに上昇させるという目標を掲げている。コロナ禍を経て、非接触・非対面での購買行動が増加しており、キャッシュレス比率は今後も高まることが予想される。
そのような環境下で業種や業態に縛られず、日常生活において現金ではなくキャッシュレス決済を行う上でのメリットとして挙げられるのが「ポイント還元」である。「ポイ活」という言葉が定着してきていることからも、企業が提供するポイントサービスの充足化は経済活動や購買体験の変化に伴いより一層注目されている。本稿では、共通ポイントサービスに着目し、Tポイント・楽天ポイントを中心に、その他ポイント事業の現状と動向についてまとめていく。

PayPay、登録者数が2000万人突破、加盟店数は170万ヵ所を超える

苦境のTポイント、SMBCとの提携で起死回生なるか

 「TSUTAYA」などを擁するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(東京都:以下、CCC)が2003年にサービスを開始した「Tポイント」は、国内共通ポイントのフロントランナーともいえる存在だ。

 直近の大きな動きとしては、2012年6月から提携関係にあったヤフー(東京都)が、22年3月末をもって各種サービスで行ってきたTポイントの付与および利用を終了した。一部サービスでのTポイント利用は継続されるが約10年間の蜜月は終了した。

 そのほかにも近年は、18年末に三越伊勢丹(東京都)グループが、19年にはドトールコーヒー(東京都)がTポイントの扱いを終了するなど有力加盟企業は次々と離脱。同じく19年にはファミリーマート(東京都)もTポイント運営会社への出資を引き揚げ、「楽天ポイント」「dポイント」を導入して「マルチポイント」化するなどTポイントは苦しい状況にあるとされていた。

 そうした中、CCC は2022年10月にSMBCグループとの資本・業務提携を発表した。SMBCグループのカード会員数5200万人(「Vポイント」会員2000万人)に加えCCCグループのTポイント会員7000万人という膨大な会員数を誇る新ポイントサービスが2024年春頃より開始する予定である。

 キャッシュレスの拡大およびVisa加盟店で貯まるVポイントの強みと提携店舗15万店、5000を超える提携企業で貯めて使えるTポイントの強みを活かし、ポイントと決済分野における新たな経済圏構築に向けて再始動している。

支持絶大の楽天ポイント、各種小売業との連携も!

 J.D.パワージャパンが行った「2022年共通ポイントサービス満足度調査」、MMD研究所の「2022年10月経済圏のサービス利用に関する調査」と、最近の消費者調査で軒並み人気トップのポジションにあるのが、楽天グループの「楽天ポイント」だ。

 人気の要因は、「楽天経済圏」の確立である。「楽天カード」「楽天Edy」「楽天ペイ」などでの支払いでポイントが付与されるだけでなく、「楽天市場」や「楽天トラベル」などの楽天グループが提供するサービスを利用することで、段階的にポイント還元率が向上するのが楽天ポイントの最大の特徴だ。

 直近では、小売との提携が続いている。2022年12月1日より首都圏を中心に88店舗を展開する食品スーパーのコモディイイダ(東京都)において楽天ポイントカードおよび楽天Edyが使用可能になった。また、山口県を中心に中国・九州地方で89店舗のSMチェーンを展開する丸久でも2022年12月より楽天ペイアプリによるコード決済が利用可能になっておる。

 2022年7月には、楽天ポイントの累計発行ポイント数が3兆ポイントを突破しており、昨今の断続的な商品の価格高騰や経済の先行きが不安定であるほど、生活防衛という観点から「楽天経済圏」の積極利用やポイ活が勢いを増すことも想定される。

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