入山章栄教授が「生協はこれからの時代に合ったビジネスモデル」と考える理由
日本の主要な地域生協の2023年度の供給高(売上高)は前年に比べ微増となったが、日本の小売業における存在感はそれほど大きいとは言い難い。しかし早稲田大学ビジネススクールの入山章栄教授は「生協はこれからの時代に合ったビジネスモデルではないか」と注目する。コープさっぽろ(北海道/大見英明理事長)の理事も務める入山氏にその真意と生協のポテンシャルについて聞いた。
利害関係者が一体化した生協の可能性に気付いた
──「協同を重視した資本主義の到来」という論文を『DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー』誌に昨年寄稿しました。従来の株主資本主義から、ステークホルダー(利害関係者)資本主義への移行が考えられるなかで、協同組合の考え方を基盤とした資本主義の到来を指摘しています。なぜでしょうか。
入山 僕は2020年6月にコープさっぽろの有識者理事に就任しました。株式会社で言えば社外取締役です。しばらくすると「株式会社と全然違うな」と感じ始めたのです。
最も違ったのが、ずいぶんと社会貢献性の高いことをやっていることです。株式会社は主なステークホルダーとして従業員と顧客、そして株主がいます。時には株主と従業員の意見が対立する。それが緊張感にもなるのですが、逆に会社がわけがわからない方向に行くこともある。
僕はその記事で利害関係者の意見が食い違う状態を「ステークホルダー・ミスアライメント」と表現しました。近代のコーポレートガバナンス(企業統治)の基底になっているのは「プリンシパル(依頼人)=エージェント(代理人)」理論です。会社の持ち主で依頼人である株主と代理人の経営者の意見がずれるのはよくないので、経営者が暴走しないようにガバナンスを利かせようという発想です。
でも生協の場合はお客である組合員が株主に当たるので、お客のためだけを全力で考えればいい。だからミスアライメント(ずれ)がないわけです。
たとえば地域で困っている人がいるから、その地域に貢献するものを売ろうと言うと、通常の株式会社なら「コストが高くて、もうからない」と株主に反対されます。だけど生協の場合は
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