Mr. CHEESECAKE田村浩二社長に聞いた、“人生最高のチーズケーキ”の現在地
買いたい人がちゃんと買える状態をつくるためには
──「幻のチーズケーキ」と言われるほど、以前のMr.CHEESECAKEのチーズケーキは「希少なもの」というイメージが定着していましたが、現在は以前よりも買いやすくなっています。生産体制強化の取り組みについて教えてください。
田村 2020年1月、会社を始めて1年目にキッチンを移転し、1年半ほどかけて生産体制を整えました。「いつでも買えるようにすることで、失うものがあるのではないか」という葛藤もありましたが、買いたい人がちゃんと買える状態をつくるほうが会社として正しいと考え、毎日販売できるような体制としました。
また、何度でもブランドをお楽しみいただけるよう「Tea Collection(ティーコレクション)という企画で新フレーバーのチーズケーキを追加したり、「Tam Lab.(タムラボ)」という企画でティラミスやガトーショコラなどチーズケーキ以外のスイーツを限定で販売したりするなど新たなチャレンジも始めています。毎日安定して買えるという便利さと、たまにしか出てこない商品のわくわく感を提案していきたいと考えています。
──アイテム数が増えると、顧客の幅が広がる一方、生産効率が下がるという問題が出てくると思います。
田村 そこは一番難しいところです。製造効率は大切だと思っているので、新しい商品をつくるとなると、チームの「練度」が違いますので、製造効率は当然落ちます。そうしたなかで、できる限り効率のよく、誰がやっても同じようなクオリティが出せるオペレーションを組むのが僕の仕事だと思っています。
たとえば、Tam Lab.から出しているガトーショコラやティラミス、ヌガーグラッセなどはすべて「イタリアンメレンゲ」といわれる種類のメレンゲを使っています。製造を重ねていくと、イタリアンメレンゲを製造する練度が上がっていきます。この効率が上がってくると、商品が異なったとしても、効率が下がりにくくなります。
商品開発では、メレンゲのような商品の軸となる「パーツ」を揃えて、味や食感が異なるもの、あるいは楽しみ方が違うものをつくることができれば、チームの練度を保ちながらお客さまにとって新たな体験が提供できます。そのあたりを上手く連動させながら、新たな味をつくっていきたいと考えています。
製造効率をどう高めるか
──Mr. CHEESECAKEでは、どのような取り組みで製造効率を高めているのでしょうか。
田村 製造面では、スタッフ全員にタイマーを持ってもらっています。同じ作業でも日々タイムを計ることで自分の成長を確認することもできます。また、自分の作業時間が把握できるようになると、仕事が何分後に終わるかもわかるようになります。
そうすると、次にどの仕事をすればよいか考えることができるようになります。これを積み重ねることで、各メンバーの業務スピードを理解できるようになり、チーム全体のタイムマネジメントを考えることが可能になります。
そのほかにも、生地の温度をすべて書き示して、スタッフ同士で共有できるようにしています。気温の変化をはじめ、製造の細かいチューニングを担当者同士で共有しながらモノづくりをしていくと、製造効率だけでなく品質も飛躍的に上がっていきます。
──田村社長は「働き方」についても頻繁に発信されています。スタッフの働き方も商品開発などに影響しているのでしょうか。
田村 フードロスや食材廃棄問題など昨今はサステナビリティが話題になることが多いですが、「人のサステナビリティ」についてはほとんど語られていないのではないでしょうか。僕はそこが大事だと思っています。どんなにおいしいものでも、人に負荷がかからないとつくれないものは長続きしません。商品開発においてもこうした考えがベースにあります。
──創業から5年目を迎えるにあたり、今後の展望について教えてください。
田村 オンラインで食を購入するという行動は今後も伸び続け、将来的にはそれが当たり前の世界になると考えています。2022年はオフラインの重要性を改めて実感しましたので、現在はポップアップや実店舗など「オンラインが生きるオフライン」の在り方を考えています。また、会社設立時から海外進出したいと考えていましたので、2023年はアジアを皮切りに海外にどうやってMr. CHEESECAKEを届けるかを検討していきたいと思います。