イズミが西友の九州事業を買収、激動の九州小売マーケットを制するのは?

中井 彰人 (株式会社nakaja labnakaja lab代表取締役/流通アナリスト)
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激動の九州マーケットは三つ巴の争いに?

 そんな中、イズミは地方で大型ショッピングモールを運営する総合スーパーとして、成長を維持し続けた数少ない存在である。今回、西友から店舗を譲受する九州エリアにおいても、イズミはイオンに次ぐ存在を持っており、コロナ前までは少しずつその差を詰めるような勢いを見せていた。

 図表3は九州におけるイオンとイズミの売上の推移を示したものだ。

 九州におけるイオングループは、かつては総合スーパーを中心とするイオン九州(福岡県)と、食品スーパーを展開するマックスバリュ九州の2社を中心に展開していたが、2020年にイオン九州がマックスバリュ九州を吸収合併するかたちで経営統合している。

 この2社の合算の推移とイズミ(九州子会社を合算)を並べてみると、コロナ前まではイズミが追い上げていた様子がわかるだろう。

 コロナ禍によってイズミは伸び悩む中、イオンは前記2社及び関係会社を統合したことで、その差が拡大したのだが、今回、西友の1000億円が合流することによってその差は再び縮小する。

 九州地盤の小売企業としては、先ごろ上場したトライアルホールディングス(福岡県:売上高は6000億円クラス、地域売上高は非開示)という存在もある。

 九州の食品スーパーにおいては、イオン・イズミ・トライアルという3強を軸とした業界地図となったと言っていいだろう。

フード&ドラッグとの競争も

 ただ、九州の食品流通においては、食品スーパーだけが主役というわけでもない。食品の低価格販売で集客するフード&ドラッグの存在感も大きい。

 フード&ドラッグ最強と評されるコスモス薬品(福岡県)は、ドラッグストア企業ながら、食品売上比率が58.5%にも達し、その本拠地である九州売上4085億円のうち、約2400億円弱が食品であると推計できる(23年5月期通期実績より)。

 そのうえ、最近の食品値上げラッシュで消費者の価格選好が強まったことによって、コスモス薬品の近時の既存店売上高増減率は、おおむね1割程度伸びており、食品スーパーにとって大きな脅威となっている。さらに言えば、九州には、サンドラッグ(東京都)グループのダイレックス(佐賀県:売上高2885億円)、ドラッグストアモリ(福岡県:売上高1822億円)なども成長を続けており、食品スーパーからシェアを奪い続けている。

 このように、厳しい競争環境にあった九州食品流通業界において、西友の九州事業はかなりの好物件だったことだろう。

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記事執筆者

中井 彰人 / 株式会社nakaja lab nakaja lab代表取締役/流通アナリスト
みずほ銀行産業調査部シニアアナリスト(12年間)を経て、2016年より流通アナリストとして独立。 2018年3月、株式会社nakaja labを設立、代表取締役に就任、コンサル、執筆、講演等で活動中。 2020年9月Yahoo!ニュース公式コメンテーター就任(2022年よりオーサー兼任)。 2021年8月、技術評論社より著書「図解即戦力 小売業界」発刊。現在、DCSオンライン他、月刊連載4本、及び、マスコミへの知見提供を実施中。起業支援、地方創生支援もライフワークとしている。

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