トップ交代、グループ再編…混迷のセブン&アイが見据える未来とは
カナダのコンビニエンスストア(CVS)大手による買収提案を受ける中、セブン&アイ・ホールディングス(東京都、以下:セブン&アイ)が9年ぶりに経営体制を刷新した。あわせて自社単独での企業価値向上をめざす方策として、イトーヨーカ堂(東京都/山本哲也社長)などのスーパーストア(SST)事業の売却や、総額2兆円の自社株買いを実施すると表明。買収提案への対抗策を強く打ち出したかたちだが、新たな成長の活路となるのか。
9年ぶりに体制刷新、SST事業も決着
「国内事業の最適化に一定のめどがついた。今後さらなる成長を実現するためには、今までとは異なる施策が必要なフェーズに入った」。3月6日にセブン&アイが開いた記者会見で、井阪隆一社長は社長交代の理由をこう説明した。
セブン&アイは同日の取締役会で、社長の人事異動について決議したと発表。社外取締役のスティーブン・デイカス氏が5月27日に開催予定の定時株主総会の承認を経て社長に就任し、井阪社長は特別顧問に就く。

トップの交代と同時に、動向が注目されていた“非コンビニ事業”の行方についても決着がついた。セブン&アイは2024年10月、イトーヨーカ堂やヨークベニマル(福島県/大髙耕一路社長)などSST事業グループ対象会社29社を統括する中間持株会社のヨーク・ホールディングス(東京都/石橋誠一郎社長:以下、ヨークHD)を設立。ヨークHDの戦略的パートナーを探していたが、セブン&アイは米投資ファンドのベインキャピタルに8147億円で譲渡することも取締役会で決議したと発表した。
セブン&アイが35%の持株分を再出資する契約内容で、株式の保有割合はベインキャピタルが60%、セブン&アイが35.07%、創業家の伊藤家が4.93%の比率となる。9月1日に効力が発生する予定で、新体制でIPO(新規株式公開)をめざすという。
井阪社長は会見で「21年に5カ年計画の中期経営計画をスタートさせてから、過去の総合小売業をめざす方向からの転換を何よりも重視してきた」と振り返り、国内外のCVS事業に注力してきたと説明。SST事業の戦略パートナーが決定したことも受け、「今こそが経営交代の最適なタイミング」と語った。
新体制で打ち出す自社単独での成長路線
新体制となるセブン&アイだが、カナダのCVS大手アリマンタシォン・クシュタール(Alimentation Couche-Tard:以下ACT)による買収提案が明るみに出てから、難局が続いている。
セブン&アイがACTの買収提案を公表したのは、24年8月のことだ。10月にはACTが買収額を約7兆円に引き上げ再提案したと報道されたが、セブン&アイは11月、事実上の買収対抗策として、創業家の伊藤家がMBO(経営陣による買収)を提案したことを明らかにした。
一部報道によると、伊藤家は伊藤忠商事(東京都/石井敬太社長)に出資を要請していたが、25年2月27日に伊藤忠商事は買収提案について検討を終了したことを発表。セブン&アイも同日、創業家側から買収提案のための資金調達のめどが立たなくなったと連絡を受けたと公表した。
セブン&アイは、ACTの買収提案を含め「すべての戦略的選択肢を精査・検討する」とのコメントを出したが、MBO断念により、選択肢として残されたのは自社単独路線での経営となっていた。
そうした状況で発表されたのが、デイカス新社長の就任だった。デイカス氏は22年にセブン&アイの社外取締役に就任。24年からは筆頭独立社外取締役となり、ACTの買収提案については、提案について検討する特別委員会の委員長としてかかわってきた。また、米ウォルマート(Walmart)や西友(東京都/大久保恒夫社長)、ファーストリテイリング(山口県/柳井正会長兼社長)でCEOなどを歴任した豊富な経験を持つ。
デイカス氏選任の経緯について、井阪社長は会見で、数年前から社長の後継者を探してきたと説明。指名委員会を設置し、社内外の複数の候補者から検討を重ねる中で、デイカス氏に決まったという。
デイカス氏は会見で