怒濤の出店で1兆円が見えたロピア!大きな進化と懸念される副作用とは

小野 貴之 (ダイヤモンド・チェーンストアオンライン 副編集長)
Pocket

2兆円達成のピースとなるのは

 もう一つ、別の角度から懸念を提示したい。それは、22年に連結子会社化したスーパーバリュー(埼玉県/内田貴之社長)の業績がなかなか改善しないという点だ。ここ数年、同社は営業赤字が続いており、25年2月期中間決算でも営業損失を計上、中期経営計画の数値目標も下方修正している。

 スーパーバリューの低迷は、“ロピア流”のオペレーションや人事制度を他企業に移植することの難しさを示している。この現状を考えると、ロピアの成長エンジンとなるのはやはり自前での出店になりそうだ。

 これらを踏まえると、今後焦点となるのは、人手不足の中で人材を確保し、その人材が納得する成果を上げられる「舞台」を用意し続けられるかという点だ。個店主義であるため、店が増えれば増えるほど、個店ごとのバラツキも大きくなる。店舗間格差をどう是正するかも課題となるだろう。

 また、直近の新店ではきめ細かなMDがみられているが、利便性が高まることによって仮にお客の来店頻度が高まると、商品面を中心としたロピアの“粗さ”が容認されなくなることも考えられる。商品開発の精度向上にも継続的に取り組む必要がありそうだ。

 31年度までにグループ売上高2兆円をめざす同社。ロピアの成長性について、専門家、業界関係者の多くは「今の路線で1兆円は到達可能」としつつも、「2兆円となると、現在の延長線上では難しいのでは」と口を揃える。

 ロピアは31年度までに300店舗体制をめざすとしているが、現在の平均年商(37~38億円:ダイヤモンド・チェーンストア誌推計、ロピアの24年2月期単独売上高を期末店舗数で按分し、新規出店店舗の実績などを考慮した数値)を考えても300店では2兆円には遠くおよばない。

 そこで、現在進める海外展開、同業のM&A、外食をはじめ新規事業、新業態、メーカー買収による川上の取り込みなどが成長戦略のピースとなるわけだが、2兆円までの売上成長を牽引するような事業はまだ存在しない。現場サイドにも2兆円に向けた具体的な道筋は明らかにされていないようだ。

 ロピアの経営の舵を握るのは創業家出身の髙木勇輔氏。同氏は強烈なリーダーシップで知られ、「創業者は先代だが、現在のロピアのかたちをつくったのは髙木(勇輔)氏」(業界関係者)との声もある。2兆円達成に向け、髙木氏の頭の中にはどのような構想があるのか。M&Aした企業群のマネジメントも含め、1兆円から先は経営の難易度が跳ね上がるのは間違いない。

 

次項以降は有料会員「DCSオンライン+」限定記事となります。ご登録はこちらから!

1 2 3 4

記事執筆者

小野 貴之 / ダイヤモンド・チェーンストアオンライン 副編集長

静岡県榛原郡吉田町出身。インターネット広告の営業、建設・土木系の業界紙記者などを経て、2016年1月にダイヤモンド・リテイルメディア(旧ダイヤモンド・フリードマン社)入社。「ダイヤモンド・チェーンストア」編集部に所属し、小売企業全般を取材。とくに興味がある分野は、EC、ネットスーパー、M&A、決算分析、ペイメント、SDGsなど。趣味は飲酒とSF小説、カメラ

関連記事ランキング

関連キーワードの記事を探す

© 2024 by Diamond Retail Media

興味のあるジャンルや業態を選択いただければ
DCSオンライントップページにおすすめの記事が表示されます。

ジャンル
業態