怒濤の出店で1兆円が見えたロピア!大きな進化と懸念される副作用とは

小野 貴之 (ダイヤモンド・チェーンストアオンライン 副編集長)
Pocket

「成長し続けること」が前提のモデル

 ただ、このビジネスモデルは「成長し続けること」を前提としたものだ。店数が増えないと好待遇を得られる「ポスト(役職)」が増えず、今のようなスピーディな出世ができなくなる。すると、従業員のモチベーションにも影響し、高い現場力を維持できなくなる恐れがあるからだ。

 だから、急成長を持続するために、最近のロピアは都市部への積極出店を継続しながら、「ルーラル」という新しい市場に打って出ている。奈良県桜井市や青森県五所川原市など人口5万人程度の市への出店である。当然、ルーラルは都市部よりも若年層の絶対数が少ないため、より広域から集客できるかが課題となる。

 それに対して、冒頭で説明した「安さ・楽しさ・独自性」の観点で対抗できる小売業態がルーラルではあまり見当たらないこと、そして都市部とは道路事情が異なるため、より広い範囲からの来店を見込める点がロピアにとっての勝算だ。まだそれほど店数が多くないため結論を出すのは尚早だが、今のところ、大都市圏外に出店した店舗はおおむね好調であるようだ。

 注目したいのは、ルーラルの売場づくりでは、都市部とは異なる「兆候」がみられたという点。本特集で実施した調査では、ルーラルエリアの店舗において、「価格」から「質」訴求へのシフト、従来のロピアではあまりなかったきめ細かなMD(商品政策)が観測された。

 個店ごとに濃淡はありそうだが、これらの動きは従来とは違った新たなターゲットの来店を促すためのものと見ることもできる。いずれにせよ、都市部と同様に、ルーラルでも売上を極大化する道を選んだということだろう。

1 2 3 4

記事執筆者

小野 貴之 / ダイヤモンド・チェーンストアオンライン 副編集長

静岡県榛原郡吉田町出身。インターネット広告の営業、建設・土木系の業界紙記者などを経て、2016年1月にダイヤモンド・リテイルメディア(旧ダイヤモンド・フリードマン社)入社。「ダイヤモンド・チェーンストア」編集部に所属し、小売企業全般を取材。とくに興味がある分野は、EC、ネットスーパー、M&A、決算分析、ペイメント、SDGsなど。趣味は飲酒とSF小説、カメラ

関連記事ランキング

関連キーワードの記事を探す

© 2024 by Diamond Retail Media

興味のあるジャンルや業態を選択いただければ
DCSオンライントップページにおすすめの記事が表示されます。

ジャンル
業態