チェーンストア経営における店長の役割
エース店長による従業員の育て方
その上で、一流の店長はどのようなことに取り組んでいるのだろうか。
カインズ(埼玉県)の売上上位の繁盛店「カインズ青梅インター店」(東京都青梅市)の嵯峨紀幸店長がとくに力を入れているのは人材育成だ。着任して最初の1年は、売場の整理整頓(せいとん)などの基本的な部分の徹底に努め、従業員の考えや意識を変えていった。
人材育成の柱になっているのが、ラインマネージャーがほぼ全員出勤する日曜日に開催している、嵯峨店長独自のブレインストーミング型ワークショップだ。ワークショップは事前にテーマを決めて、参加者が自由にディスカッションすることで、マネージャーの思考力を向上させることをねらう。
売場づくりは極力支持を出さず、アドバイスも最小限にとどめて、担当者に任せる。このように「商売意識」を醸成していくことで、従業員自らが発案した売場提案やイベントも増えていった。
コーナン商事(大阪府)は店長職に「店長」「シニア店長」「マイスター店長」と3つのクラスを設けている。約10人しかいない、店長の見本となる「マイスター店長」の1人、山田朗弘店長は「ホームセンターコーナン高槻城西店」(大阪府高槻市)を繁盛店へと押し上げた。
山田店長が着任時、店としての状態は決してよくなかった。清掃が行き届いておらず、欠品が目立ち、雰囲気も暗かった。そこで山田店長は着任後、とくに従業員の教育に力を入れた。能力の差が出にくい作業と出やすい作業の2つに分け、あいさつや単純作業など能力の差が出にくい作業を徹底して行うようにしていった。
その結果、半年ほどで変化は訪れ、「店がきれいになった」と顧客から声を掛けられるようになり、店の雰囲気も一気に変わっていった。その後、業績も堅調に推移しているという。
コメリ(新潟県)の上中越エリアの旗艦店舗「コメリパワー長岡店」の岩波智晴店長は着任して2年半、従業員のレベルアップに注力してきた。デジタル活用やバックヤードの整理整頓など、職場環境の整備をすると同時に、「営業時間中は売場に出ているのが基本」という方針を徹底する。
適切な人員配置にも取り組み、単作業を担うスタッフや専門知識を持ったアドバイザーが主力になる店舗づくりが実現した。
店長の采配で業績も変わる
DCM(東京都)の中型店舗「DCM阿久比店」を任されているのは、女性店長の坂口祥子店長だ。店長歴1年目の坂口氏は従業員に自ら考えて、気づきを見つけてもらう方法で、モチベーションアップにつなげる。その結果、お客さま目線の売場づくりも進めていき、社内の「SDGs売場コンテスト」や「販売コンテスト」でたびたび受賞。売上は対前期比2ケタ増とお客からの支持も集めている。
アークランズ(新潟県)の都市型店で繁盛店の「スーパービバホーム豊洲店」の三浦慎司店長は顧客目線、従業員目線、会社目線で物事を判断する。豊洲店に着任すると、課題だったカード会員の獲得や欠品対策などに取り組む。さらに単品販売で全店ナンバーワンをめざし、従業員と一丸になって売場づくりを盛り上げる。
綿半ホールディングス(長野県)の「綿半スーパーセンター富士河口湖店」は食品売場を導入したスーパーセンター業態。保谷英寿店長が着任した当時は赤字だった。生鮮食品の粗利コントロールやプライベートブランド商品を目立させる売場づくりを地道に続けていった結果、黒字化を達成。従業員のモチベーションもアップさせた。
本特集では、顧客だけでなく従業員からも慕われ、店舗を立て直し、繁盛店へと押し上げた、7人の店長にインタビューした。一流店長は実際どのように現場を切り盛りしているのか。生の声をお届けする。
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