日本のリーダーシップ形態の急所! 意思決定法の組織浸透が急務

青木 英彦 (東京理科大学大学院教授)
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意思決定法の実践機会が少ない

 前回までは、第一世代の小売業が進むべき戦略の方向性と、その変革がなぜ成し遂げられなかったのかを、組織の観点から議論した。本号からは、組織の活性化に向けた施策を、意思決定の観点から考えてみたい。

 ビジネススクールでは、意思決定の分野における数多くの理論やフレームワークが教授されている(抽象)。また、個別企業の事例研究や経営者の講演、社会人学生による経験談なども授業を通じて豊富に共有されている(具体)。しかしながら、これらの理論をいかに個別事象に当てはめていき、実際に意思決定精度を高めていくのか、すなわち、具体的な思考法や意思決定のプロセスの実践方法について学習する機会は非常に限定的だ。

 さらに、主要先進国の初等教育課程においては、論理的思考や「ディベート」などの教育がなされ、議論の仕方を学ばせているが、日本の初等教育においては、論理的思考を学ぶ機会が少ない。自ら率いる組織が、正しい判断を下し、組織一丸となってその決定を実行するためには、まずは経営幹部が意思決定の技法を学び、修得する必要があるだろう。

求められる技法とプロセスの標準化

 ビジネスコンサルタントである細谷功氏は、「知の発展とは、知識や情報の量的な拡大とともに、その具体的な知識や情報を包括する概念の抽象度が上がっていくこと」だと喝破している(細谷功著『「具体↔抽象」トレーニング』(2020))。

 日々起こっている個別具体的な事例の本質や根本原因を見抜き、その対策の優先順位をつけ、実際に施策を実行すると起こりうる潜在的な問題を想定しておくことは、まさに、具体と抽象の往来の典型であろう。今、日本企業に求められる技法とは、

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記事執筆者

青木 英彦 / 東京理科大学大学院 教授

東京理科大学大学院 経営学研究科 技術経営専攻(MOT)教授。

1989年神戸大学経営学部を卒業し、野村総合研究所に勤務。野村證券インターナショナル(米国ニューヨーク市)、ゴールドマン・サックス証券、メリルリンチ日本証券、野村證券にて小売・EC担当証券アナリスト業務に従事。2020年9月より現職。1994年米国Duke大学Fuqua School of BusinessにてMBA取得。2018年神戸大学大学院経営学研究科後期課程修了、博士(経営学)。日本証券アナリスト協会検定会員、CFA協会認定証券アナリスト、日本小売業協会CIO研究会ステアリングコミッティ委員。同流通サプライチェーン政策研究会メンバー。21年12月より加藤産業株式会社社外取締役、23年6月より株式会社ワールド社外取締役

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