「ダイソー」創業者・矢野博丈さんが「会社は潰れるもの」と考えて経営にあたった真意
「恐れおののく力」が重要な理由とは
そこから再び矢野さんは、以前の貪欲な矢野さんに戻った。「会社は潰れるもの」という気持ちを新たにして、店舗巡回のたびにケータイ電話で写真を撮り、気付いたことを担当者に写メ(ケータイ電話で撮影した写真をメールで送ること)して苦言を呈するようになった。
「恵まれた者は不幸だ。恵まれているから、そこから先の努力をしなくなる」というのが矢野さんの持論だ。
《人間は、決して強い生き物ではない。丸裸なら「陸」「水」「空」のいずれでも、いろいろな生物に負けてしまう。1対1で格闘すれば、生命がいくつあっても足らない。だから人間は、頭を使い、知恵を絞り、火を利用し、道具、服、家、武器をつくり、決して強くない身体を守った。狩猟をして、農耕をして、定住をして文化をつくった。病気と闘い、原因を追究して、長寿できるようにした。その結果、生命体としては決して強いとはいえない人間が地球の主役になっている》
大創産業(広島県)の矢野さんは、このことを「恐れおののく力」と言っていた。弱いことを知っているから強くなれる、ということだ。
だから矢野さんは、慢心してはいけないと自戒してきたのだ。
その矢野さんが2月12日になくなった。10回ほどの取材を通して、本当にいろいろなことを教えていただいた。ありがとうございます。(合掌)

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