リセールにレンタル 小売業は循環型モデルで収益化できるか?ショップトークで語られた真実
企業内循環経済モデルを構築した
アーバンアウトフィッターズ
ヤングファッション大手のアーバンアウトフィッターズ(Urban Outfitters)は19年に循環経済における新事業モデル構築を目指し、レンタルサービス「ヌーリィ(Nuuly)」を開始した。自社ブランドを含む300以上のブランド、1万5000以上のスタイルの中から月額88ドルで6スタイルまで借りることができる。21年にはリセールマーケットプレイス「ヌーリィ・スリフト*(Nuuly Thrift)」も開始した。*スリフトショップは中古販売店という意味がある
23年1月期のヌーリィ事業売上高は1億2964万ドル、前年比272%でアーバンアウトフィッターズにおける売上高構成比は前年度の1.0%から2.7%へと成長した。同社は22年に初めてサステナビリティに関する「インパクトレポート」を発行し、全社的なソーシングや配送時の廃棄削減、ディストリビューションセンターやオフィスのエネルギー使用の削減、そして「ヌーリィによって当社は大手ファッション企業初のリテール、レンタル、リセール、ホールセールを運営する企業となった」と報告している。
セッション「収益性とサステナビリティを改善する新たな戦術と事業モデル」に登壇したチーフテクノロジーオフィサー兼ヌーリィ・プレジデントのデイヴ・へイン氏は「循環モデルをどう企業活動に取り入れるかが重要だ。配送もCo2排出量をオフセットし、配送に用いるコンテナもサステナブルな素材を使用している。また、昨年1年間で補修した製品数は5万着にもおよんだ」と説明した。ビジネスの状況については、「15万人の顧客がいて、リテンションレート(既存顧客維持率)は半分。2019年(ヌーリィ開業時)の顧客がまだいて、顧客はこの事業モデルにバリューを感じてくれている。ヌーリィ・スリフトについては、開始からまだ半年程度だが、先行していたレンタルビジネスの顧客ベースの存在が大きい(スリフト事業の利用者拡大に寄与している)」と述べた。へイン氏は「財務的サステナビリティも重要で、ヌーリィはまだ赤字だが、2023年度末には黒字化の予定だ」とコメントした。レンタルとリセールは同じ専用設備を使うので投資回収を早めることができるという。
スレッドアップはリセール専業、アーバンアウトフィッターズは新品・中古品を扱う複合チャネルブランドだ。製品回収・補修・再販という既存の施設・業務ではまかなえない機能に投資しながら収益をいかに生むのか、まだ成功のパターンは見えていないが、先駆企業たちの情報共有は後続企業にとって大きな学びとなりそうだ。