DX失敗A級戦犯の隠蔽手法とスマートファクトリーで激変するアパレルビジネスの姿とは
スマートファクトリーでアパレルビジネスはこう変わる!
さて、これからのアパレルビジネスはどう変わるのだろうか?
世の中の組み立て産業は、中国Shein(シーイン)のようなD2Cに近づいてゆき、工場から直接出荷される時代が来る。この時代、個人に対して単品を送り、また、流通もサプライチェーンも存在しない。クーリエサービスを使うわけだ。あのZARAもFedExを利用しており、いまだに複雑なコンテナーを港で組んでいるのは日本だけで、これは中国に地理的に海を隔てて近い距離にあるという立地だけの問題で、このようなオペレーションが常識になっていれば、世界に対して競争力のある商品を販売できないのは当たり前なのだ。
その結果、サプライチェーンという概念はなくなり、いままでマーケティングをやっていた人はデータサイエンティストに職を奪われる。
このようにアパレルビジネスの激変は必至であるにも関わらず、冒頭のように企業改革に対してビジネスパーソンが猛烈に反対する理由は大きく二つある。一つは、自分の仕事がなくなること。もうひとつは、自分のやり方が変えられるからである。
MD(商品政策)も変わる。余剰在庫に対する風当たりは世界でどんどん厳しくなり、SDGsの観点から、やがて「在庫税」が課せられる時代が来るだろう。モルガンスタンレーの試算では、余剰在庫は世界で30%、日本では100%が毎年投下される。
そうなると、今のように「まずは、POC*だ」と、あるブランドだけで、生産管理のセンサリングに関するソリューションも確立していないのに、箱だけつくって「スマートファクトリー」だ、とうそぶくような仕事は誰もやらなくなる。生産に対する知識がなさ過ぎるのだ。
*Proof of Concept:概念実証
真のスマートファクトリーとは、テクノロジーを活用し段取り替えを自由にでき、生産を途中で止めたり、追加したり、自由に動かすことができるものだ。
この場合、工場で行われている、いわゆるTQCや稼働率管理などは無駄になる。これにより工場は「コストセンター」となる。だが、年間20億円以上の在庫を残すより、よほどマシだということを分かっていない。管理会計が、旧神戸アパレルのものを利用しているから、工場での損失が店頭での余剰在庫と相関関係があるようなKPIなど想像もついていない。だから、アパレルは素材を持つことをしないのだ。つまり、生産工場はアパレルに垂直統合され、柔軟性が激しく上がってゆく。
したがって、今のように商社が集めたサンプル毎に仕様書を描いていたら、商品の数だけ工場が増えて、調べるとたかだか売上20億円程度のブランドで、アカウントが1000を超えるなどということが起きるのだ。
売上1兆円のユニクロの工場数は50〜100だから、日本のアパレルがどれだけ無駄なことをやっているか想像に難くない。
その結果、今は中国で3ヶ月、バングラデシュで半年という途方もなく長い納期となっている。ところが、デジタルベンダーはこうしたフィジカル・クライシスを理解しようともせず、相変わらず机上の予測に終始している。どんなに精度の高い予想を行っても、半年前、あるいは一年前に消化率80%を超える需要予測を行うことは不可能だ。
したがって、この場合工場のシェアを上げ、工場を自社化し、工場に投資を行って前述のスマートファクトリー化を行ってフィジカル・リプレニッシュメント(物理的な補充)を改善するわけだ。物理的な商品が入らねば、いくら机上の予測があたっても意味が無いことが理解できないレベルでは、改革が成功するわけがない。
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