中国企業傘下の仏メゾン「ランバン」米国で上場 いまや中国企業に追いつけない理由
世界は日本を完全無視 中国、韓国がファッション大国
中国の複星国際、つまり中国資本までもがJapan passing (日本無視)をおこない、すでに香港に上場したあと、世界に拡大する足がかりはニューヨークに上場した。
そして、とうとう「世界の工場」と揶揄された中国が、2018年(いまから3年前だ)世界のトップメゾンであるランバンを買収し本社までも上海に移している、トップメゾンの仲間入りを果たしたのである。中国がフランスメゾンの仲間入りを果たしたということを日本のアパレル業界人はどれだけ知っているのだろうか?
さらに、同社はシューズのSergio Rossi、豪州のWOLFFORD、米国St John、イタリアの高級紳士服Caruso(私の憧れブランド)さえも傘下に収めている。彼らは、すでに80か国以上、3600人の従業員をかかえ、あらたに200を超える新規出店まで考えている。この中国のスピードこそ、カメのように固まって30年も海外に出ず、あげくの破堤は日本で潰し合いをしているアパレル業界との大きな差なのだ。
おわかりだろうか。今時、日本の「安心」「安全」が中国でブランドになるなどという昔話を今でもやっている勘違いを。日本人は、私の『ブランドで競争する技術』を読んだ上で、「ブランドの作り方を教えろ」という不勉強さ(理解できなかったのだろうか?)だ。
ブランドをつくりたければ、本にも書いてあるように「100年間同じことをやりつづけろ」ということなのだ。そうでなければ、「100年間同じことをやり世界が認めた会社を買えば良い」のである。
中国企業が実行する「この合理的な判断」を、なぜ日本企業はできないのだろうか。思えば、バブル時代、金余りのアパレル企業は自社ビルを買い、ゴルフ場を買った。挙げ句の果てには溜め込んだ金を投資家に還元せよ、とアクティビストに攻撃された企業もあった。こうした彼我の差をみれば、日本の衰退は、日本のアパレルが絶頂期だったDCブームから始まったと考えるべきだ。
投資会社を巻き込み、超絶なスピードで世界化をすすめる秘策
さて、今回のランバン・グループの上場は特別買収目的会社(SPAC)であるプリマベーラ・キャピタル・アクイジションと合併する形で上場した。
このSPACについて簡単に説明しよう。SPACとは、Special Purpose Acquisition Companyの略。SPACは「空箱」と呼ばれ、上場後に、実業を行う企業を買収する。簡単に言えば、事業会社は上場したSPACと合併することで、上場企業に課せられる厳しい審査などをパスし、短時間で上場することができるというわけだ。
今回のケースで言えば、このスキームを活用して、ランバン・グループは難なく上場を果たしたということであり、その後も未公開企業を買収させ、最速でコングロマリットを作ることもできる。
このSPAC方式をつかって買収をする今回の目的は
- 買収スピードの速さ(最速でコングロマリットをつくることができる)
- 上場基準に満たない小さい企業も参加にいれられる
であろう。
いかがだろうか。PLM一本いれるのに2年も議論し、世の中はすでにバリューチェンからD2Cに変わっているにも関わらず、失敗を繰り返している日本企業と、迅速なヴィジョンとスピードを持つ中国企業との違いを。
SPACの組成者であるプリマベーラ・キャピタル・グループは170億ドルを超える資産を運用する世界有数の投資会社である。日本企業は、いまでも「ファンドが怖い」などといって、政府の補助金頼みになっているが、投資会社は、グローバルの常識では最速で世界を席巻する可能性のあるコングロマリットをつくるためのパートナーになりうるということなのだ。
私の所見では、LANVINというブランドをつかって中国発のLVMH(モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン)を作ろうとしているのだろうと思う。これは世界を震撼させるだろう。
河合拓氏の新刊、大好評発売中!
「知らなきゃいけないアパレルの話 ユニクロ、ZARA、シーイン新3極時代がくる!」
話題騒然のシーインの強さの秘密を解き明かす!!なぜ多くのアパレルは青色吐息でユニクロだけが盤石の世界一であり続けるのか!?誰も書かなかった不都合な真実と逆転戦略を明かす、新時代の羅針盤!
河合拓のアパレル改造論2022 の新着記事
-
2023/01/24
「大ディスカウント時代が到来」 この意味が分からないアパレルの未来は悲観的な理由 -
2023/01/17
H&MやZARA等が原価下回る価格で取引を強要 SDGs時代にこんなことが起こる必然の理由 -
2023/01/10
ビッグデータを制する企業が勝利する理由と、M&Aできない企業が淘汰される事情 -
2022/12/27
2023年のアパレル大予測 外資による買収加速・DX失敗・中国企業に完敗、が起こる理由 -
2022/12/20
中国企業傘下の仏メゾン「ランバン」米国で上場 いまや中国企業に追いつけない理由 -
2022/12/13
過去のヒットからAIが予測し売れる服を自動生成!?アパレル業界の課題とこれからとは
この連載の一覧はこちら [55記事]
関連記事ランキング
- 2024-10-29ライザップ傘下の夢展望、Temu効果で株価高騰も拭えない「不安」とは
- 2024-10-15利益5000億円越え!世界で圧巻の強さのユニクロが中国で苦戦する理由とは
- 2024-10-22事業再生、「自ら課題解決する」現場に変えるための“生々しい”ノウハウとは
- 2024-09-27ユニクロが中間価格帯になったことに気づかない茹でガエル産業アパレルの悲劇_過去反響シリーズ
- 2024-10-08コンサルの使い方に社長の役割…企業改革でよくある失敗と成功の流儀とは
- 2024-09-17ゴールドウイン、脱ザ・ノース・フェイス依存めざす理由と新戦略の評価
- 2021-11-23ついに最終章!ユニクロのプレミアムブランド「+J」とは結局何だったのか?
- 2024-01-02勝ち組はSPAではなく「無在庫型」へ 2024年のアパレル、5つの受け入れ難い真実とは
- 2024-05-07ユニクロ以外、日本のほとんどのアパレルが儲からなくなった理由
- 2024-10-16「亜熱帯化」でも売上を伸ばすユニクロ、伸び悩むアパレルとの違いとは