商品、トレンド、キャッシュ アパレルビジネスが今3つの回転率に着目すべき理由

河合 拓 (株式会社FRI & Company ltd..代表)
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キャッシュのターン・オーバー

これは、前号で説明したキャッシュ・コンバージョン・サイクルである。話を交差比率に戻すと、バブル時代、商品とお金は逆相関で動いていた。しかし、商社は、豊富な資金や、ローンを戦略的に使い、金利分をLDPLanded duty paid、国内アパレル渡し)に上乗せして商社金融を作り、輸入決済は銀行LC(信用状)や本邦ローンなどのユーザンス(返済までの期間)を使って国内では「締め、支払い」や「手形」、「分引き決済」など、日本の決済習慣にあわせていた。したがって「商社外し」を行えば、たちまちキャッシュフローが悪化する。今、商品回転率を上げる目的は、経営者に取っては「キャッシュの増加」を意味し、現場にとっては「欠品撲滅」を意味し、両者は異なっていることに多くのアパレル企業は気づいていない。

このように、ターン・オーバーとは、トレンド、商品、キャッシュの3つがあり、古き良き時代では、この3つが相関性をもって動いていたが、今これらは複雑に、そして、バラバラに動いている。個社の消化率がどんどん落ちているのはこのためだ。

「リードタイムが短ければ良い」というのは誤り

生産稼働を安定化させるには、前もって生産ラインや素材確保をしなければならず、そのため、キャッシュアウトは必ずシーズン前に発生する。あらかじめ備蓄した素材を活用し、事前に計画した生産ラインで商品をつくるわけだから、商品投入が単サイクルだろうが、長期サイクルだろうが、当月売れればキャッシュインが発生するわけだからキャッシュ回転率は変わらない。ベーシック衣料の強さはこういうところにあるわけだ。

もちろん、生産ラインも確保せず、素材備蓄もせず、毎回ドタバタ騒ぎを繰り返すやっつけ仕事のQRを繰り返すのであれば、商品回転率とキャッシュ回転率は相関するが、そんな商品は粗悪品の塊となりそもそも売れないだろう。SPAと名が付くアパレル企業は、直貿化を増やしながら工場の生産ラインの計画的確保と素材の備蓄をすればよい。あとは、安定した生産体制で売れる商品を作りキャッシュコンバージョンサイクルを上げるわけだ。交差比率は、商品回転率と現金回転率を混同した古い考え方なのだ。

いかがだろうか。今回、古い教科書を真っ向から否定する主張をしたが、商社外しが加速し、雑誌からインスタライブへ、など時代は大きく変化してきており、これらの影響を、「トレンド」、「商品」、「キャッシュ」の回転に分解し、相関性を考えてもらいたい。しっかりとした分析をすれば、ここに書かれている主張が正しいことがわかるだろう

 

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プロフィール

河合 拓(事業再生コンサルタント/ターンアラウンドマネージャー)

ブランド再生、マーケティング戦略など実績多数。国内外のプライベートエクイティファンドに対しての投資アドバイザリ業務、事業評価(ビジネスデューディリジェンス)、事業提携交渉支援、M&A戦略、製品市場戦略など経験豊富。百貨店向けプライベートブランド開発では同社のPBを最高益につなげ、大手レストランチェーン、GMS再生などの実績も多数。東証一部上場企業の社外取締役(~2016年5月まで)

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記事執筆者

河合 拓 / 株式会社FRI & Company ltd.. 代表

株式会社FRI & Company ltd..代表 Arthur D Little Japan, Kurt Salmon US inc, Accenture stratgy, 日本IBMのパートナー等、世界企業のマネジメントを歴任。大手通販 (株)スクロール(東証一部上場)の社外取締役 (2016年5月まで)。The longreachgroup(投資ファンド)のマネジメントアドバイザを経て、最近はスタートアップ企業のIPO支援、DX戦略などアパレル産業以外に業務は拡大。会社のヴィジョンは小さな総合病院

著作:アパレル三部作「ブランドで競争する技術」「生き残るアパレル死ぬアパレル」「知らなきゃいけないアパレルの話」。メディア出演:「クローズアップ現代」「ABEMA TV」「海外向け衛星放送Bizbuzz Japan」「テレビ広島」「NHKニュース」。経済産業省有識者会議に出席し産業政策を提言。デジタルSPA、Tokyo city showroom 戦略など斬新な戦略コンセプトを産業界へ提言

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