「デジタル化と小売業の未来」#12 ユニクロのEC化率が伸びない意外な理由

望月 智之 (株式会社いつも 取締役副社長)
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結局、人は店舗で買うようになる

  結論から言えば、リアル店舗がデジタルに対応して利便性が高まっていくと、「結局、人は店舗で買うようになる」ということなのです。ユニクロはその典型なのですが、ユニクロのEC売上のうち、実に40%は店舗受け取りとなっており、購入から受け取りまでの導線も非常によくできています。ECでの買物に慣れていれば、ふつうは店舗で商品を受け取るということは面倒なことのはずです。しかし、「モノを受け取るまでの時間を含めたコストが低い方法」で商品を受け取りたいと一般的な消費者は考えています。

消費者は商品を受け取るまでのトータルのコストを考慮している
消費者は商品を受け取るまでのトータルコストを考慮している

 ユニクロの場合、多くの店舗が駅チカに立地しているため、ECで注文して翌日に自宅に届けてもらうより、最寄りの店舗ですぐに商品を購入するか、用事のついでに店舗に立ち寄って商品を受け取るほうが利便性も高く、商品受け取りのトータルコストが低くなるのです。ユニクロは購入に至るまでにリアル店舗を含め複数の選択肢があることから、デジタル投資を行って改善を重ねても、純粋な売上に対するEC化率を上げることができなかったのです。一方、EC化率が20%を超えるブランドの店舗は都市部の商業施設に多いため、なかなかそのお店に行けない人たちがオンラインショップで購入する場合が多く、結果的に売上に占めるECの比率が高くなるのです。

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記事執筆者

望月 智之 / 株式会社いつも 取締役副社長
1977年生まれ。株式会社いつも 取締役副社長。東証1部の経営コンサルティング会社を経て、株式会社いつもを共同創業。同社はD2C・ECコンサルティング会社として、数多くのメーカー企業にデジタルマーケティング支援を提供している。自らはデジタル先進国である米国・中国を定期的に訪れ、最前線の情報を収集。デジタル消費トレンドの専門家として、消費財・ファッション・食品・化粧品のライフスタイル領域を中心に、デジタルシフトやEコマース戦略などのコンサルティングを手掛ける。ニッポン放送でナビゲーターをつとめる「望月智之 イノベーターズ・クロス」他、「J-WAVE」「東洋経済オンライン」等メディアへの出演・寄稿やセミナー登壇など多数。

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