AI投資で関心の高い6領域は?生成AI、小売業の期待と課題

望月 智之 (株式会社いつも 取締役副社長)
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2022年に生成AIツールが発表されたことを契機に、AI市場は急速に盛り上がりを見せています。小売業においても生成AIを活用することで得られるメリットは大きく、大幅なコスト削減やマーケティング精度の向上が見込まれるため、世界中の企業が注目しているのです。しかし、生成AIを活用するための課題や障壁は多く、積極的な投資が行われるほどには至っていません。そこで今回の記事からシリーズとして、小売業における生成AIの課題と具体的な活用例についてご紹介します。

peterhowell / istock
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小売業における生成AIへの期待

 ビジネスの観点からAI投資に関心を寄せる層を対象としたアンケートによると、最も関心の高い項目として「顧客体験の改善」が挙げられました。接客やチャットボットなどの消費者対応のほか、業務の効率化や自動化・従業員の生産性向上・需要予測・欠品対応・需要期の予測やそれに伴うシフト編成など、さまざまな分野に期待が寄せられていることが分かります。

(出典:AI Will Transform Retail — But Success Hinges On Tech, Data, And Process)

 そんな生成AIですが、業種を問わず役立つ場面として最も重要な点は、コンテンツの作成にかかる時間とコストを大幅に削減できる点です。たとえば、挨拶文を数秒で作成したり、顧客に送るメールマガジンを瞬時に生成したりと、コンテンツの作成コストがほぼゼロに近づいています。

 従来であれば、1通のメールを書くのに510分かかっていたところが、生成AIを活用することで、数秒で完了するのです。この効率化は、テキストだけでなく画像や動画にも同様に当てはまります。

 生成方法も革新的で、これまでのシステムではある程度制約された枠組みの中で項目を入力し、それに基づいてアウトプットを得る形が一般的でした。しかし、生成AIは自然な言語や対話形式で利用できるため、ユーザーにとって非常に使いやすいのも大きな特徴と言えるでしょう。

  さらに、生成AIのもう一つの大きな進歩は、非構造化データのベクトル化が可能になった点です。たとえば、これまでは「1+1=2」のように、はっきりとしたルールがある処理を得意としていました。

 一方で、曖昧な文章を分類したり、感情分析をしたり、意図を読み取るといった非構造化データの処理は苦手とされていました。

 しかし、生成AIを活用することでランダムな文章や複雑なデータを処理できるようになり、文章や図面、写真、動画といった数値以外のデータも扱えるようになりました。このような技術を活用することで、大幅な業務効率化や品質向上が期待できるのです。

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記事執筆者

望月 智之 / 株式会社いつも 取締役副社長
1977年生まれ。株式会社いつも 取締役副社長。東証1部の経営コンサルティング会社を経て、株式会社いつもを共同創業。同社はD2C・ECコンサルティング会社として、数多くのメーカー企業にデジタルマーケティング支援を提供している。自らはデジタル先進国である米国・中国を定期的に訪れ、最前線の情報を収集。デジタル消費トレンドの専門家として、消費財・ファッション・食品・化粧品のライフスタイル領域を中心に、デジタルシフトやEコマース戦略などのコンサルティングを手掛ける。ニッポン放送でナビゲーターをつとめる「望月智之 イノベーターズ・クロス」他、「J-WAVE」「東洋経済オンライン」等メディアへの出演・寄稿やセミナー登壇など多数。

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