アパレル業界再編勃発! ビームス、アマゾンにPB供給開始は再編の序章
4) 外資PLMの日本企業での導入は再検討が必要
外資PLM企業は本社の強いセールス圧力で節操ない営業を繰り返し、決して、そのPLMの理想である「全体最適」に導いているとはいいがたい。例えば、今、日本でSPAブランドを順位づけすれば、一位がユニクロの約7000億、続いてg.u.の約2500億、しかし、その後は200億から5億円程度の中小企業・事業2万社を超えるブランドの集まりである。日本の1000億超上場企業でも、マックスで200億程度のブランドが精々、あとは10-50億程度の集合体でしかない。
しかも、彼らは仲が悪く、素材や工場を同じ会社でも共有することを拒む。そんなところに、年間使用料が億円単位のPLMが入るはずがない。さらにサブスクでプラットフォームとしてエコシステムを広げれば広げるほど課金される構造的欠陥をはらんだ仕組みなのだ。
結局、PLMが導入されている企業をみれば、自社グループでR&D、製造部、流通、販売を持っているシューズメーカーや、海外のアンダーウエアメーカーだけなのはそういう理由が背景にあり、バリューチェーンがシンプルで自社コントロールが可能だからだ。
これは、本来、トップ同士がまず集まって、バリューチェーンを横断してトップ同士が、誰がどこに投資を行い誰がそのメリットを享受し、それをどう分けるかというところまでの設計をしなければならないのである。例えば、商社が3D CAD. (3D CADはクラウド化できていない) 投資を行っても、アパレルが仕様書作成に使わなければ無意味になるし、アパレルが5枚複写の専用伝票を廃止しなければ商社の違算管理業務は手作業から解放されない。バリューチェーン全体の各工程で投資対象と受益者が異なっており、この調整をやらずに自社利益優先(個別最適)の進め方をするから「開けてビックリPLMだらけ」ということになる。
5) QRは機能しない
30年前の作り増し型QRは、現代では通用しないというのが世界の常識だ。QRというのは、初期ロットを薄く広くバラマキ、初速スピードの速い商品をクイックに追いかける手法だ。しかし、これは、拙著「生き残るアパレル 死ぬアパレル」で克明に記したように、消費者にとってすでに欠品など存在しないほど業界はモノマネが横行し、自社で欠品が発生すれば競合が奪い取る。生産リードタイムを短くしたいのであれば、アパレルが自ら素材と生産ラインのリスクを持ち、KPIを「欠品」から「客単価」にしVMDを工夫して昨年ものでも着こなしで新しく見せ、残存期間を商品ごとに厳密に設定、3-5年で償却する管理手法で解決可能だ。大ロットの商品が、同じ通販でA社はドル箱で、B社は大赤字。調べてみたら償却期間の違いだったということが幾度もあった。
また、過去指標についても、今でも機能しているか再検討が必要だ。まことしやかに語られる商品回転率は、こうしたMDミックスを行えば、5年かけて売る商品もあれば、ワンシーズンで売り切るものが混在しているため、そもそもブランド毎、あるいは会社毎の商品回転率や交差比率という指標もその内容が問題で、単独KPIとしては機能していない。例えば、2つのブランドの商品回転率が同一で2.5回転だとしても、ポートフォリオミックスの結果なのか、あるいは、すべてのオペレーションが等しくスローで2.5回転なのかによって指標の読み方が異なってくる。
さらに重要なのは財務戦略である。アパレルは商社の資金調達をみたことがないだろう。まるで、ジェットコースターのようにアップダウンが激しい。こうしたことを知らず、商社外しを行って財務の読み間違いが多発しているようだ。このようなMD戦略や直貿化の拡大が最も影響を与える財務も、現金の増加と減少を平準化するブリッジローン(運転資本の谷間を埋める借入)を戦略的に行う必要もある。経理部に財務を任せ、違算管理や給与計算ばかりやっている企業がここで躓くのだ。
6) 成熟経済下ではオーガニックグロースはない
先進国の経済はすでに成熟型・循環型に入っている。中国と米国が頭一つ抜け出たとはいえ、まだ金融緩和政策を続けているのがその証左だ。しかし、日本は政府の過剰融資もあり、未だ雨後の筍のように新たなブランドが生まれ、また、誰も買わないような商品がサーキュラーエコノミーの名の下に量産されている。加えていうなら、幾多の企業が目指すプラットフォーマーの道も多難が待ち受けている。200億円以下の企業群の利害をとりまとめる力を持っているリーダーの存在を私は知らない。過去の歴史を見れば、優れたといわれる経営者ほど、ヒットアンドウエイ(個人が数十億の金を手に入れ、あとは逃げ去る)がアパレルビジネスの勝ち常識になっている。
さまざまな指標も公表され、日本の人口減少と実質所得の低下を考えれば、これ以上に日本で物販をすることは不毛な戦略であることは自明だ。むしろ、先週紹介したような将来性あるスタートアップを買収・事業提携し、自社の硬直化した事業モデルに組み込み、資金力と企画力を併せ持つべきだ。今、日本企業が世界にでても、よほどの差別化ができない限り、赤子の手をひねるがごとく一蹴され日本に戻ってくるのは目に見えている。
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