森永乳業 代表取締役社長 宮原 道夫
乳で培った技術を生かし健康で豊かな社会に貢献する!

聞き手=下田健司 構成=室作幸江
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50年以上ビフィズス菌を研究、健康に寄与する商品づくり

──森永乳業の商品は多岐にわたっています。商品開発についてどのように考えていますか。

宮原 ひと言でいうと、「長年の研究で培った技術を活かして、時代のニーズに合った商品を開発してお届けしていく」ということです。

 そのきっかけとなったのが、育児用ミルクの発売です。当時の育児用ミルクは品質向上が進んでいなかったため、育児用ミルクで育った赤ちゃんと母乳で育った赤ちゃんを比べると、発育状況も病気にかかる割合も差がありました。そこで、育児用ミルクの栄養成分を母乳に近づけることに取り組むと同時に、赤ちゃんがより健康に育つための機能性成分の研究も進めました。

 地道な研究の結果、母乳で育った赤ちゃんの腸内には、善玉菌の代表格であるビフィズス菌が圧倒的に多いということがわかりました。そして発見されたのが、ビフィズス菌BB536です。また、母乳に含まれる機能性成分、ラクトフェリンも発見しました。これらは赤ちゃんのよりよい健康のために、乳の力を深く探求していった成果であるといえます。

──現在、世界的に話題となっている「腸内フローラ」の研究を他社に先駆けて取り組んできたのですね。

宮原 当社では赤ちゃんの健康を保つカギとして、50年以上にわたってビフィズス菌を研究し続け、さまざまな機能性を明らかにしてきました。

 2007年頃から、「次世代シーケンサー」という装置が世界的に普及しました。複雑な腸内細菌の遺伝子配列などを網羅的に解析することができる遺伝子解析装置のことです。これにより、腸内フローラの解析技術が大きく進歩しました。当社は、日本の食品メーカーのなかでいち早く次世代シーケンサーを導入し、腸内フローラの研究に役立てています。どのような腸内細菌が、どのように好影響あるいは悪影響を与えるのか。さらに深く探求し、商品開発に生かしています。

──商品開発で今、力を入れている分野は何ですか。

宮原 超高齢社会の日本では、健康寿命の延伸が重要な課題となっています。その観点からいうと、運動機能維持のためのたんぱく質摂取を補助する商品、生活習慣病予防に役立つ商品、アンチエイジング効果をもつ商品などに潜在的なニーズがあると考え、力を入れています。

 また、ビフィズス菌BB536をはじめとした腸内フローラ改善の研究や商品開発は、赤ちゃんから高齢者まで、それぞれの世代の健康に寄与するものです。当社がもつ素材や技術を生かして、お客さまのニーズに合った商品開発に取り組んでいます。

──具体的にはどういった商品がありますか。

宮原 たとえば、「ラクトフェリンヨーグルト」や「アロエステ」といった機能性ヨーグルトが挙げられます。このカテゴリーについては、今後、新商品を含めてさらに強化していく予定です。デザートでは「おいしい低糖質プリン」が、ロカボを実践する方から支持をいただいています。

 また、今春より全国発売している「森永乳業のサプリメント」は、長年のミルクの研究から見出した当社の独自素材を配合したサプリメントシリーズです。

 ほかにも、通信販売チャネル限定になりますが、大人向けの粉ミルク「ミルク生活」が挙げられます。カルシウムや鉄分の補給に加えて、ビフィズス菌BB536、ラクトフェリン、シールド乳酸菌、中鎖脂肪酸などを配合しており優れた商品です。

 シールド乳酸菌といえば、生菌ではなく加熱殺菌体でも免疫賦活効果が期待できるため、加工食品に取り入れやすいことから、BtoB(事業者向け)向け素材として、菓子類や加工食品、飲食店メニューなど、幅広い業態で取り扱っていただいています。この9月には当社からシールド乳酸菌を配合した「乳酸菌と暮らそう」シリーズを発売します。飲料、デザート、アイスクリームなど、カテゴリーの垣根を超えて展開する予定です。

森永乳業製品

──時代のニーズに合った商品を提供していくために、どのような開発体制をとっていますか。

宮原 現在、大きく分けて4つの研究所を置いています。まず、基礎研究所では、食が果たすべき社会の課題に挑戦し、将来の礎を築くイノベーションを推進しています。腸内フローラやペプチドの研究などがその代表例です。

 次に、素材応用研究所では、「おいしさ」や「健康」の価値を高める素材の応用可能性を幅広く追求しています。2年前に基礎研究所から独立した部門で、主にBtoB向けの独自素材を国内外のユーザーに向けて提供しています。

 3つめの健康栄養科学研究所では、粉ミルクと流動食を二本柱にしています。赤ちゃんから高齢者までのさまざまな分野における健康栄養科学食品の開発に取り組んでいます。

 そして食品総合研究所では、ヨーグルトやチーズ、アイスクリームなどを中心に、独自の技術を結集させながら、お客さまの期待に応えられる商品開発に力を注いでいます。

 これら4つの研究所に加え、応用技術センターではお客さまの視点で商品を使い、レシピ開発や商品評価などを厳しく行っています。

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