アパレル産業のSDGsをDXで解決する方法とは 余剰在庫問題は課題設定を間違えている

河合 拓 (株式会社FRI & Company ltd..代表)
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余剰在庫削減と販売を両立させるZARAモデル

Photo by tupungato
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河合 私は、そのパラドックス(矛盾)を解くため、ZARAを徹底研究しました。行き着いた答えは、すでに「生き残るアパレル死ぬアパレル」に記載しましたが、「欠品だらけの売場をつくり、新商品を投入して客単価を維持する」というやり方です。つまり、必要な半製品在庫は無くなればおしまい。次に、新しい企画の商品をつくってだせばその問題は解決可能です。また、「奥」の視点が抜けているかと思います。確かに、多彩な商品群を全て受注生産にすれば、そのようなことになるでしょう。しかし、現実は売れている品番はパレートの法則で、数点に収斂されますし、いわゆるファッション商品など買い付けで、Subject to unsold (売り切りごめん)で欠品前提でMDポートフォリオを組めば良い。

 日本のアパレルは、なぜか、素材とデザインを切っても切り離せないものと考え、追加生産をする場合、同じ素材と工場での生産を要求します。ここを切り離せば、多彩な商品アイテムと受注生産や高い商品回転率は両立します。なぜなら、リードタイムが最も長いものは素材だからです。

 一昨年、スペインのZARAをファーストリテイリングの柳井正氏が訪問したのは有名な話ですね。その後、+Jを投下し、+Jは欠品だらけになった。最後は、あまりに人気があったのか追加生産しましたが、私は、あの欠品段階でとめておくべきだったと思います。

入来 存在意義のあるアパレル企業が、環境と事業のサステナビリティを両立するには消費者に多様な選択肢を提供しつつ、過剰生産を回避し余剰在庫を極小化することが必要です。そのために、企画・商品化と生産・供給の分離をDXという手段でどのように実現するかについて述べます。

 ZARAモデルの実現には、企画開始から商品投入までのリードタイムが「日単位」であることを求められますね。

1日に1000品番以上の商品をリリース、企画から商品出荷までのリードタイムは最短3日というSHEIN
1日に1000品番以上の商品をリリース、企画から商品出荷までのリードタイムは最短3日というSHEIN

 あえてSDGsの対極にある例から入りますが、中国の越境ECであるSHEIN(シーイン)は1日に1000品番以上の商品をリリースしており、企画から商品出荷までのリードタイムは最短3日です。当然、追加生産などありえません。低価格と合わせて米国ではアプリダウンロード数でAmazonを超え、2020年度約1.1兆円の売上をたたき出しました。彼らのビジネスモデルは広州のサプライチェーン網による力技で成り立っており、米国で環境保護に関する違反*で裁判を起こされるなど、この問題のど真ん中にいますが、圧倒的な品番数が成長に貢献した事実は無視できません。

 ロット生産とのバランスをとるには、欠品を前提とした数量で生産した上で、品番を特定した機会ロスを検知し、即座に適切な代替品をオファーする。十分な販売可能品番数があるという前提のもと、EC上であれば、商品マスタへの商品DNA自動付与によってある程度実現可能です。この部分はRidgelinezとしてもAIエンジンを実際に持っております。

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記事執筆者

河合 拓 / 株式会社FRI & Company ltd.. 代表

株式会社FRI & Company ltd..代表 Arthur D Little Japan, Kurt Salmon US inc, Accenture stratgy, 日本IBMのパートナー等、世界企業のマネジメントを歴任。大手通販 (株)スクロール(東証一部上場)の社外取締役 (2016年5月まで)。The longreachgroup(投資ファンド)のマネジメントアドバイザを経て、最近はスタートアップ企業のIPO支援、DX戦略などアパレル産業以外に業務は拡大。会社のヴィジョンは小さな総合病院

著作:アパレル三部作「ブランドで競争する技術」「生き残るアパレル死ぬアパレル」「知らなきゃいけないアパレルの話」。メディア出演:「クローズアップ現代」「ABEMA TV」「海外向け衛星放送Bizbuzz Japan」「テレビ広島」「NHKニュース」。経済産業省有識者会議に出席し産業政策を提言。デジタルSPA、Tokyo city showroom 戦略など斬新な戦略コンセプトを産業界へ提言

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