個店経営でお客のニーズに対応、全員参加の商売が個店を強くする=ヤオコー 川野 幸夫 会長

聞き手:下田 健司
構成:小木田 泰弘 (ダイヤモンド・ドラッグストア 編集長)
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個店経営は「全員参加の商売」で充実する

──具体的に、どのように個店経営へと転換していったのですか。

川野 「ここまでは本部」「ここからは店で考えてほしい」と範囲を決めて、店の従業員が考えられる幅を少しずつ広げていきました。

 パートナーさんについては、ヤオコーの商いに少しずつ参加してもらうように進めていきました。販売計画や発注ミーティングなどでパートナーさんが意見を出しやすいように配慮したり、あるいは意見を取り入れられるようにしていきました。

 現在、店が独自に考えている割合は一定ではありません。店がすべてを考えるのは不可能です。ですからだいたいは本部の提案通りに売場をつくっているようです。ただし、生鮮食品やデリカ、グロサリーなどでは、お客さまにどうしても売り込みたい商品がある場合は、ゴンドラのエンドを使ったり、店独自にPOPを作成したり、メニュー提案の「クッキングサポート」コーナーの従業員と連携しながら、お客さまにご提案している店もあります。

 店は、ヤオコーのコンセプトや商いの考え方から外れない限り、基本的には何をしてもいいというスタンスです。

 たとえば新店の建築計画では、就任予定の店長や主任などの要望は、売場のレイアウトやバックヤードの配管ピットの位置に至るまで、設計変更でお金がかかってもなるべく反映しています。また、パートナーさんの多くは担当部門の商品の発注や売場づくりまで手掛けています。店ごと、部門ごとの損益もわかるようになっていて、パートナーさんが損益改善案を考え、成功につなげた事例は数えきれないほどあります。

──月に一度、パートナーが成功事例を発表する「感動と笑顔の祭典」を開催しています。

川野 成功事例を全店で共有し、パートナーさんの商売の主体性を育むために行っています。

 15年4月の「感動と笑顔の祭典」は107回目でしたから、約9年間、毎月開催していることになります。そこでは、パートナーさんが自ら考え、実行し、具体的に数値が改善した事例を報告しています。

 私は毎回出席し優秀なチームを表彰していますが、ヤオコーのパートナーさんは日本一だと思います。「ここまでパートナーさんに考えていただけるのか」と、涙が出ます。名称は「感動と笑顔の祭典」ですが、私にとっては「感動と笑顔と涙の祭典」です。

 パートナーさんの多くは主婦であり、家庭の食事の主役です。優秀な方が多く、SMのお客さまのニーズも潜在的に把握しているので、店で活躍してもらわない手はありません。

 このように、パートナーさんにも商いに参加してもらう「全員参加の商売」を実現することは、個店経営の充実につながります。

 店長のアイデアは1人の考えにすぎませんが、店には多くのパートナーさんがいます。商いの主体性をパートナーさんが持ち、自ら考え実行し検証する。その数が多いほど、店が充実するのです。14年に復活させた大運動会「スポーツと音楽の祭典」も、「全員参加の経営」の一環です。

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構成

小木田 泰弘 / ダイヤモンド・ドラッグストア 編集長

1979年生まれ。2009年6月ダイヤモンド・フリードマン社(現ダイヤモンド・リテイルメディア)入社。「ダイヤモンド・チェーンストア」誌の編集・記者を経て、2016年1月から「ダイヤモンド・ドラッグストア」誌副編集長、2020年10から同誌編集長。

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